会計を知っていても起業はできなかった-会計士起業家が語った関西の魅力と起業への道のり【第5回・公認会計士ナビonLive!!(2)】

来る2016年8月20日(土)に東京・日本橋にて公認会計士と「FAS・コンサルティング」「ベンチャー・スタートアップ」をテーマに第6回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。

本記事では第6回の開催に向けて大阪で開催された第5回・公認会計士ナビonLive!!in大阪の内容を振り返ります。

第5回 公認会計士ナビonLive!!のトークセッションでは、「関西出身会計士たちが語る会計士のベストキャリアとは!?」をテーマに、関西出身の5名の公認会計士が、それぞれのキャリアや会計士の活躍フィールドについて語りました。

※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。

 第5回 公認会計士ナビ on Live!! in 大阪
  ~関西出身会計士たちが語る会計士のベストキャリアとは!?~

【開催日】 2016年2月20日(土)14:00~17:00
【場所】 HERBIS PLAZA(大阪)
【登壇者】
・有光 賢治(辻・本郷ビジネスコンサルティング株式会社 執行役員/公認会計士・税理士)
・大石 悠人(大石公認会計士事務所 所長/公認会計士・税理士)
・大野 拓海(株式会社クラフル 代表取締役社長/公認会計士試験合格)
・草地 崇浩(GEヘルスケア アジアパシフィック ファイナンスマネジャー/公認会計士 米国公認会計士)
・宮崎 良一(株式会社BridgeConsulting 代表取締役CEO/公認会計士・税理士)

会計を知っていても起業はできなかった-会計士起業家が語った関西の魅力と起業への道のり

なぜ起業家を目指したのか?デイトレーダーだった高校時代

会計士でありながら、ハンドメイドに特化したプラットフォームサービス Crafulクラフル)を立ち上げ、同社の代表を務める大野氏。当日は、参加者の前でCrafulのサービス紹介も行った。

大野氏がハンドメイドの領域で起業したのは、世界的に見ても勝機があるマーケットだったというだけではなく、自身がハンドメイド好きだったからという理由もある。 

 

大野 拓海

株式会社クラフル 代表取締役社長/公認会計士試験合格

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。2011年、公認会計士試験合格。公認会計士試験合格後にベンチャー企業へ入社し、経理・IPO準備の実務に従事。その後、株式会社エスネットワークスにてチェーン飲食店・半導体メーカーを中心に、会計コンサルティングを経験。2015年3月、株式会社クラフル設立。東京、関西の数々のビジネスコンテストに入賞しながらも、関西を拠点にハンドメイドがもっと楽しくなるプラットフォーム「Craful(クラフル)」の開発・運営を行う。

そんな大野氏の起業家としてのベースは、高校時代に遡る。自由な学生時代を送っていた大野氏、単位制定時制高校に通いながら株のデイトレードに傾倒しており、当時のベンチャーブームの代表格であるサイバーエージェントやライブドアの影響を受けたとのこと。起業家に憧れ、将来は自分も起業家にと夢見たのは高校3年生の秋のことだったそうだ。

起業するのならば色々な会社を見てみたいと思い、銀行員か会計士が自分の進むべき道だと考えました。ただ、銀行員になるには大卒であることが必要。自分が通っていた高校のレベルとしても自分自身としても、大学進学など考えられない環境だったので、銀行員の道は無理だとすぐ理解しました。高卒でも目指せるのは何かと考えて、じゃあ会計士になろうと決めたんです。

ここまででも、ユニークな経歴は十分お分かりいただけるだろうが、大野氏は21歳での公認会計士試験合格後、監査法人ではなく、ベンチャー企業に就職をする。会計士の就職氷河期でもあり、大卒でもないその特異な経歴から唯一行きたかったある監査法人に縁がなかったこともあるが、いつか起業をするのであればそこに繋がる選択をという思いからも、上場前の企業への就職を希望し、IPO直前々期の大阪の不動産ベンチャーで働くことを決めた。

不動産ベンチャーではIPO準備など貴重な経験ができたものの、その過程で「いくら会計の経験を積んでも起業はできない」と気付き「起業するには、営業力やマーケティング力、サービスやプロダクトを作る能力が必要で、自分にはそれらの経験が不足している」と考え、次のステップを模索し始めたという。

今考えると当たり前なんですが、せっかくベンチャーにいても会計やIPO準備をやっていたら起業できないんですよね(笑)

なので、転職活動をすることにしたのですが、そうしたら、起業家輩出という観点から興味を持ったリクルートから、東京勤務の営業職として内定が出ました。でも、コンサルファームであるエスネットワークスの大阪事務所へ転職をすることにしたんです。 

エスネットワークスへの転職を決めた理由は2つあり、ひとつは経営者輩出を理念のひとつに掲げる会計ファームで、その理念のユニークさに惹かれたこと。もうひとつは「起業を考えているので、2年で辞めます」という宣言を受け入れてくれたことでした。結果的に、エスネットワークス在職中に起業準備を進めていくことになりました。

起業イベント行脚の日々-ハンドメイド専門サービス Craful(クラフル)を始めた理由

エスネットワークスに在籍しながらの起業準備では、起業のために必要なアイデアを探そうと、ハッカソン*に参加する毎日だった大野氏。参加回数は年間20回にのぼり、関西だけにとどまらず全国のハッカソンに参加するように。東京はもちろん東北など全国各地をまわり、宮城の離島「浦戸諸島」で開催されるハッカソンに行ったこともあるという。

*ハッカソン・・・起業関連イベントの1種。エンジニア等が集まりイベント期間中にサービスを開発し、その技術やアイデアを競うコンテスト。 

Craful クラフル|ハンドメイドがもっと楽しくなる場所

ハッカソンへの参加を通じて、起業にあたってのアイデアを模索する中、クラフルのサービスを思いついたきっかけは、2013年に米国発のスタートアップで世界最大のハンドメイドマーケットプレイスでもあるEtsy(エッツィー)の創業メンバーAdam Freed氏(元COO)との出会い。

「なぜハンドメイドの領域なのか?」「なぜビジネスとして成長しているのか?」「どのようにユーザーに愛されるサービスになっていたのか?」。幾つかの会話を交わして自分なりに感じたことがあり、また自身が小学校時代に家庭科部に所属しており、ハンドメイド好きだったことも手伝って、この市場でやってみようと決意するに至ったそうだ。

当日はCrafulのプレゼン(ピッチ)も披露してくれた大野氏。

関西は生きていくためのコストが安い-関西で起業した理由

起業やスタートアップは東京が盛んというイメージがある中で、敢えて関西で起業した理由について、大野氏は以下のように語った。

起業する際に最も重要だったのは、生きていくためのコストを安く抑えられるかどうか。私の場合は実家が大阪なので、大阪であれば生活費も最低限に抑えられるという事情がありました。実際の所、東京はエンジニアの人件費が高騰しているなど、スタートアップが盛り上がっている分大変な面も多くあります。しかも、東京は通勤ラッシュがすごすぎて、精神的に良くないですからね(笑)。

それに、クラフルは事業の面においても、関西での起業は利点がありました。大阪にはかつて繊維街として栄えた船場(せんば)という街があり、そこに服飾関連メーカーなどが集中しているんです。ハンドメイド事業にとって、とても相性がいい場所でした。また、最近は関西を地盤としたVCも増えており、資金調達の面でも環境は整ってきていると思います。

そして、広報面のメリットもありました。というのも、東京以外でスタートアップすると目立つんです。東京だとスタートアップの数が多いので、埋もれてしまうけれど、地方枠ということで日経新聞に載れたりもしますしね。

最後に「会計士の知識は起業に活きたのか?」という質問に対しては、こう答えた。

自分でバックオフィス業務ができるので、その分コスト削減できたというメリットくらいです。基本的に初期のスタートアップには、会計士の知識が役立つことはほぼない。

外部からアドバイザーとして関わるのであれば、ミドルステージ以降のIPOを目指す状況なら、内部統制や管理体制の構築などで役に立つと思います。とはいえ、スタートアップと言っても、行っているビジネスがそれぞれ違うので、まずはそれをどれだけきちんと理解できるか。そしてビジネスの内容に興味を持てるかどうかが、何よりも一番重要だと思います。

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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