監査法人に6億円賠償命令、東芝とPwCあらたに問われる説明責任…など2件:今月の会計士業界ニュース(2018年3月その1)

  • 2018/3/27

2018年3月20日に、粉飾決算で監査法人に賠償命令、東芝とPwCの対応に疑問の声などに関する複数のニュースがリリースされています。

工作機械メーカー“プロデュース”の粉飾決算で合併先の監査法人に賠償命令が下った件、東芝とPwCあらたが株主からの動議を却下し説明責任を果たさなかったとされる件など、幅広く記事をご紹介します。

責任の所在はどこに?請求棄却から一転有罪。“プロデュース”粉飾決算で東陽監査法人に賠償命令

“プロデュース”の粉飾決算事件は、会計士の指導で粉飾が行われた大変ショッキングな事件だったので、記憶している方も多いのではないでしょうか。

今回、この件に関して東陽監査法人を被告とした有罪判決が下されています。判決の内容を紹介する前に、“プロデュース”の上場まで遡って経緯をおさらいしてみましょう。

  • 2005年12月 “プロデュース”がジャスダック上場。東都監査法人が監査人として関与
  • 2006年10月 東陽監査法人と東都監査法人が合併。“プロデュース”の監査人が東都監査法人から東陽監査法人に変更
  • 2007年3月 東陽監査法人が中間監査報告書を提出
  • 2007年11月 “プロデュース”を担当していた元東都監査法人の会計士が独立して、隆盛監査法人を設立。期末監査から隆盛監査法人に監査人を変更
  • 2008年10月 “プロデュース”がジャスダック上場前から粉飾決算を行っていたことが発覚
  • 2011年12月 隆盛監査法人が破産

たった6年の間に、監査法人の新設、合併、破産が複雑に入り組み、責任の所在が見えづらくなっています。東陽監査法人は、この監査法人再編の流れを受けて、責任を問われることになりました。

その東陽監査法人に6億円の賠償命令が下ったという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

新潟県長岡市の工作機械メーカー「プロデュース」(破産)の粉飾決算で株価が下落し、損害を受けたのは監査法人に責任があるとして、株主が、粉飾時の監査法人を吸収合併した東陽監査法人(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日までに、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、約6億1760万円の支払いを命じた。

引用元:監査法人に6億円賠償命令 「プロデュース」粉飾決算 (日本経済新聞 2018年3月20日付)

記事によると、高裁は、吸収後の監査法人の免責を認める余地はないと結論付けて、このような判決に至ったとのことです。

東都監査法人が粉飾を指南して、その東都監査法人を東陽監査法人が吸収したので、東陽監査法人に責任があるという理論です。

東陽監査法人にとっては、2006年10月に東都監査法人と合併して、2007年にはプロデュースの監査人が隆盛監査法人に変更しており、プロデュースの監査報告書を出したのも、2007年6月期中間のたった1回だけです。

しかし、6億円の賠償支払命令が下されました。監査業界ではM&Aは珍しいことではありませんが、監査法人のM&Aには今回のようなリスクを秘めていることも忘れてはなりません。

株主からの動議を却下。東芝とPwCあらたよ、説明責任を果たせ-八田教授、久保利弁護士は何を問題とするか

東芝は上場維持が決まり、一方のPwCあらたについては、公認会計士協会から責任を問わないという結論が出たことで、一連の責任追及は終わったかに見えます。

ですが、限定付きでも適正意見が出せたのはなぜか、会社の内部統制に問題があるとしながらも監査意見を出して、今も関与を続けているのはなぜなのか。損害を被った株主が聞きたいことに対して、疑問点も残されています。

これについて、会計監査研究の第一人者である八田教授と、総会実務の第一人者である久保利英明弁護士との対談が東洋経済ONLINEからリリースされています。

そもそも監査法人は監査先が守秘義務を解除しなくても、株主総会で自ら発言できる権限が法的に与えられているのだから、自発的に説明すべきだった。

引用元:東芝とPwCあらたは市場へ説明責任を果たせ(東洋経済ONLINE 2018年3月20日付)

記事では、八田教授と久保利弁護士は、東芝とPwCあらたは説明責任を果たすべきではなかったかと指摘しています。

また、PwCあらたが出した限定付適正意見についても言及しています。6,522億円という、東芝の売上高の1割に匹敵する額の減損処理を巡って会社と意見が対立したにも関わらず、財務諸表に対して重要性がないという結論はおかしいと指摘し、東芝だけでなく監査人や証券市場の制度に対しても問題点を挙げるなど、現在の監査制度や上場規則等について考えさせられる内容となっています。

(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧

 

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