2022年4月の会計士業界ニュースをお届けします。
「トーマツ粉飾疑惑に反論」「EY片倉正美理事長が実行するリーダーの役割」「監査法人登録制度の実効性」の3本です。
トーマツ粉飾疑惑に反論
仮にこの記事が真実だとすれば、日本の監査制度を揺るがしかねない騒動になりそうです。
今回、監査法人トーマツの粉飾疑惑に関する記事が、ストイカからリリースされています。
ソフトウェアの会計処理は、無形資産だけにごまかしやすいグレーゾーンだ。資産か費用かは、一般企業なら監査法人に厳しくチェックされる。ところが、当のトーマツ自体は労務・人事管理ソフトに25億~28億円という法外な額を支出し、費用でなく資産に計上した。
【引用元:監査法人トーマツに自己粉飾疑惑:疑惑のトーマツ 上(ストイカ 2022年3月11日付)】
記事によると、監査法人トーマツが2015年9月期決算で計上したフトウェア仮勘定24億6200万円について、翌期にソフトウェアに振り替えられてデロイトトーマツ合同会社に28億3600万円で有償譲渡したことや、多くの会計士やSAPの専門家が、数千万円から2億~3億円もあれば構築できるソフトウェアで高額だと指摘していると伝えられています。
この報道に対して、監査法人トーマツから即日リリースが出されています。
リリースでは、事実誤認に基づく記事掲載であり、このような悪意に基づく記事に対しては法的手段も含めて厳正に対処すると、反論しています。
2015年9月期と2016年9月期のソフトウェア仮勘定及びソフトウェアの状況については、下記の説明書類で確認することができます。
また、その後、ストイカでは、上記に続く記事もリリースされています。
示談になるのか、それとも法廷に持ち込まれるのか。多くの関係者が行く末を注視しています。
EY片倉正美理事長が実行するリーダーの役割
先日、 「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2021」の個人部門ブレイクスルー賞を受賞した、EY新日本監査法人の片倉正美理事長。女性活躍のロールモデルとして注目が集まっています。
今回、EY新日本の片倉正美理事長へのインタビュー記事が、日本経済新聞から(上)・(下)シリーズでリリースされています。
EY新日本監査法人の片倉正美理事長(53)は監査のデジタル化を推進している。非効率な旧来型の仕組みを見直し、顧客ニーズに応える狙いだ。
【引用元:EY新日本監査法人・片倉正美理事長 変革へ少数派強み 私のリーダー論(上)(日本経済新聞 2022年3月31日付)】
記事(上)では、片倉理事長が、小学生時代から理事長に当選するまでの道のりを語ります。理事長選では、片倉理事長のスピーチに最初はしらけた雰囲気でしたが、出席者が徐々に危機感やデジタル化の必要性を認識し始めて、片倉理事長の理念に引き込まれていったと言います。
EY新日本監査法人の片倉正美理事長は「誰もが安心して『おかしい』と言える雰囲気がないと監査は成り立たない」と語る。従業員をより小規模な単位で管理し意思疎通しやすくするなどの組織改革を進めている。
【引用元:おかしいと言える組織作る EY新日本監査法人理事長 片倉正美氏(下)(日本経済新聞 2022年4月7日付)】
記事(下)では、組織づくりで片倉理事長が意識している点や、デジタル活用について伝えられています。
心身ともに健康で、社会的使命感を持ちながら働ける監査法人。バックグランドが異なるすべてのメンバーが安心して働けるような、細かやかな配慮が行き届いた施策が、片倉理事長流という印象を受ける記事でした。
監査法人登録制度の実効性
2007年から公認会計士協会が上場会社の会計監査を行う監査法人の登録を担っていますが、今後、法的拘束力のある登録制度の導入が予定されています。
今回、登録制度の法制化に関する記事が、日本経済新聞からリリースされています。
上場企業の会計監査において役割が増す中小監査法人の選別が進みそうだ。監査担当を大手から替える動きが目立つ一方、ずさんな監査体制で行政処分を受ける中小は少なくない。
【引用元:中小監査法人、登録制で選別へ 運用の厳格さカギに(日本経済新聞 2022年4月5日付)】
記事によると、改正公認会計士法は2022年度内に施行が予定されているおり、情報開示などを強化する方針だと伝えられています。記事内では、應和監査法人の澤田総括代表が、中小監査法人の現状についてコメントしています。
中小監査法人への行政処分が相次ぐ中、監査法人登録制度の法制化で、監査法人に対する信頼を回復することはできるのでしょうか。
以上、今月の業界ニュースでした。
なお、今回、取り上げた記事はこちらの3本です。詳細は以下の記事をご参照ください。
今回取り上げたニュース
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)