2020年6月の決算、監査法人関連のニュースをまとめました。
2020年6月17日、22日にリリースされた「事業継続リスク開示前期比で2割増」「決算発表遅れに今後の日本の課題」「新興のガバナンス未整備で続く不祥事」の3件のニュースをご紹介します。
事業継続リスク開示前期比で2割増
- 事業継続リスク、73社が開示 コロナ禍の20年3月期(日本経済新聞 2020年6月17日付)
旅行業界や飲食業などの業績悪化で、日本公認会計士協会から「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」が公表されており、継続企業の前提に関して留意するよう示されています。これを受けて、2020年3月期決算の開示はどのようになっているのでしょうか。
今回、2020年3月期決算短信の事業継続リスク開示に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
赤字が続くなど事業の継続にリスクを抱える企業が増えている。投資家に注意を促す「継続企業の前提に関する注記」や「重要事象」を2020年3月期の決算短信に記した企業は、73社と前の期より2割増えた。
引用元:事業継続リスク、73社が開示 コロナ禍の20年3月期(日本経済新聞 2020年6月17日付)
記事によると、事業継続リスクを開示した業種としては、外出自粛の影響を大きく受けた外食やサービス関連の企業が目立っており、臨時休業や営業時間短縮による売上減少で債務超過になっているケースや、減損損失の計上で財務制限条項に抵触したケースなどがあげられています。
第2波が不安視される中、市場の動向は不透明で、継続企業の前提を評価する経営者も判断が難しく、監査人も慎重な判断を迫られたのではないでしょうか。本記事ではコロナ以外の事業継続リスクについても詳細に分析されていますので、ご興味のある方は以下をご参照ください。
- 事業継続リスク、73社が開示 コロナ禍の20年3月期(日本経済新聞 2020年6月17日付)
決算発表遅れに今後の日本の課題
- 決算発表遅れ 日本目立つ 平均4日、欧米は0.5~1.6日 コロナでも正確さ重視(日本経済新聞 2020年6月17日付)
2020年3月期決算は在宅勤務など異例の体制で決算作業や監査が行われており、決算発表遅延のニュースが多く見られました。
今回、決算発表日の諸外国比較と日本の決算発表が遅れた原因に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
2020年3月期の決算発表では、新型コロナウイルスの影響で当初の予定日より開示を遅らせる企業が相次いだ。海外を見渡すと、日本のような目立った遅れは出ていない。日本で遅れた背景を探ると、決算報告などの制度面での欧米との違いが浮かび上がる。
引用元:決算発表遅れ 日本目立つ 平均4日、欧米は0.5~1.6日 コロナでも正確さ重視(日本経済新聞 2020年6月17日付)
記事によると、2020年3月期決算は過去3年間の平均発表日と比べて、日本は平均4.11日、米国企業は平均1.6日、欧州は平均0.5日遅れており、日本の遅れが目立っていると伝えられています。
あずさ監査法人の小川勤パートナーは、「多くの上場企業は実質的な監査手続きを受けてから決算発表をしている」とコメントしており、決算短信の数字を正確にしたい企業の意向が遅れの原因となったと分析しています。
正確性とスピードという相反する2つの目標を両立させることは難しいかもしれませんが、諸外国と同水準でスピーディーに開示ができるように、監査法人と日本企業に変革が求められています。詳細は下記ををご覧ください。
- 決算発表遅れ 日本目立つ 平均4日、欧米は0.5~1.6日 コロナでも正確さ重視(日本経済新聞 2020年6月17日付)
新興のガバナンス未整備で続く不祥事
- 新興、問われる企業統治 エルピクセルで横領事件 成長優先、体制に遅れ(日本経済新聞 2020年6月22日付)
スタートアップの資金調達が盛んに行われる一方で、スタートアップのガバナンス体制に問題があり、不祥事が発覚する事件も起きています。
今回、先日、約30億円にも及ぶ巨額の横領で大きく報じられたスタートアップ企業「エルピクセル」の横領事件とガバナンス体制に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
人工知能(AI)開発のエルピクセル(東京・千代田)の元取締役が29億円を横領した疑いで逮捕された事件が波紋を広げている。スタートアップは開発や成長を優先し、社内体制の整備が遅れている企業は少なくない。多額のマネーが流れ込むようになり、ガバナンスが問われている。
引用元:新興、問われる企業統治 エルピクセルで横領事件 成長優先、体制に遅れ(日本経済新聞 2020年6月22日付)
記事によると、エルピクセルでは通帳原本を他者がチェックする体制がなく、元取締役が1人で会社口座の資金を入出金できたと伝えられています。これを受けて、ある大手監査法人の幹部は「横領事件は起きるべくして起きた」とコメントしています。また、TMI総合法律事務所の小川周哉弁護士も、数億円の資金を集めたら内部監査体制を整えるべきだとしています。
スタートアップでは成長性に目が行きがちですが、限られた人材でガバナンス体制を整備することも今後の課題です。詳細は下記ををご覧ください。
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新興、問われる企業統治 エルピクセルで横領事件 成長優先、体制に遅れ(日本経済新聞 2020年6月22日付)
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)