2019年7月の会計士業界の時事ニュースをお届けします。
7月5日、6日、20日にリリースされた「清流監査法人に行政処分勧告」「会計士が起業家になる理由」「株主があずさ監査法人提訴。オリンパス事件で2千億円」の3件のニュースをご紹介します。
清流監査法人に行政処分勧告
- 清流監査法人に行政処分勧告 監査審査会 (日本経済新聞 2019年7月5日付)
公認会計士・監査審査会から約1年ぶりに監査法人に対する勧告が出されました。
今回、公認会計士・監査審査会から清流監査法人に出された行政処分勧告に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
公認会計士・監査審査会は5日、中小の清流監査法人(東京・千代田)に対し、行政処分などの措置を取るよう金融庁に勧告した。
引用元:清流監査法人に行政処分勧告 監査審査会 (日本経済新聞 2019年7月5日付)
記事によると、人員不足や業務管理体制の問題、会計処理誤りの見落としなどが理由となり、今回の勧告に至ったということです。
公認会計士・監査審査会から出された、勧告に関する資料はこちらです。
- 清流監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(公認会計士・監査審査会 令和元年7月5日付)
この資料では、平成29年度品質管理レビューで限定事項を付されたにも関わらず、清流監査法人が十分な対処を行わなかったと指摘しています。また今回の検査では、業務管理態勢、品質管理態勢、個別監査業務において不備が認められたと説明しています。
多くの監査法人が監査の品質向上に注力している中での今回の勧告、努力するすべはなかったのかと残念でなりません。
会計士が起業家になる理由
- 異業種で働く人との出会いが道を開く(大手小町 2019年7月6日付)
起業家へとキャリアチェンジした会計士の方々は、どのような理由で起業を決意するのでしょうか。
今回、家事代行会社CaSy代表取締役社長である加茂雄一さんへのインタビュー記事が、大手小町よりリリースされています。
家事代行会社CaSy代表取締役社長、加茂雄一さん(36)は、グロービス経営大学院で出会った仲間2人と現在の会社を設立しました。
大学院に通い始めたのは、2011年。大学卒業後、公認会計士として監査法人で働いて6年目。土日や平日の夜間を利用して、少しずつマーケティングや人材マネジメントなどの基礎科目から学び始めたそうです。
引用元:異業種で働く人との出会いが道を開く(大手小町 2019年7月6日付)
記事によると、加茂さんはコンサルティングで経営者から本音で悩みを聞けるようになりたいと、仕事と両立しながらグロービス経営大学院に通い始めたのだそうです。そこでのちに共同経営者となる仲間との出会いや、実現させたいと思えるビジネスのアイデアを得て、起業に至ったということです。
監査法人にいる方も、異業種の人たちと交流する機会を持たれてみてはいかがでしょうか。
株主があずさ監査法人提訴。オリンパス事件で2千億円
- 監査不十分と2千億円の賠償請求 オリンパスの巨額損失隠しで株主(共同通信社 2019年7月20日付)
オリンパス事件では2012年に金融庁からあずさ監査法人に業務改善命令が下されており、幕引きかと思われていました。ところが事件発覚から約8年が経った今、新たなニュースが報道されました。
今回、オリンパス事件で株主からあずさ監査法人への訴訟提起に関する記事が、共同通信社よりリリースされています。
2011年に発覚したオリンパスの巨額損失隠しを巡り、監査法人の不十分な調査が会社に損害を生じさせたなどとして、東京都の個人株主が、あずさ監査法人に対し、約2112億円をオリンパスに賠償するよう求めて東京地裁に提訴していたことが20日、関係者への取材で分かった。
引用元:監査不十分と2千億円の賠償請求 オリンパスの巨額損失隠しで株主(共同通信社 2019年7月20日付)
記事によると、東芝不正会計問題で株主が監査法人を訴えた例はあるものの、監査法人を相手取った株主代表訴訟は珍しいということです。
2千億円という巨額の損害賠償請求で、監査法人の責任が問われるのか、また金額にどの程度の合理性が認められるのか。26日の第1回口頭弁論の行く末を注視したい思います。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)