2018年5月9日から5月15日にかけて、監査法人や公認会計士に関する複数のニュースがリリースされています。
BIG4が残高確認システムを共同開発、新会社“デロイトトーマツキャピタル”設立、タクシーにカッター所持で乗車した会計士逮捕など、幅広く記事をご紹介します。
BIG4が残高確認のためのシステムを共同開発
- 大手監査法人がタッグ 取引確認システムを共同開発(日本経済新聞 2018年5月12日付)
確認状の発送・回収といえば、新人が担当する代表的な監査手続です。ですが、繁忙期で時間がないときに現場から事務所に戻り回収チェックしなければならず、大きな負担になっていました。
今回、人手不足が深刻な会計士の煩雑な業務を減らすため、大手監査法人が取引確認システムを共同開発するという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査先企業の取引状況をオンラインで確認するシステムを共同開発し、人手不足が深刻な会計士の煩雑な業務を減らす。日本の大手法人が監査業務の共通化に踏み切るのは初めてで、世界でも例がない試みという。
引用元:大手監査法人がタッグ 取引確認システムを共同開発(日本経済新聞 2018年5月12日付)
記事によると、新システムでは企業が金額をオンラインで入力する方法が検討されているとのことです。システムの稼働後は、中小監査法人や個人の会計事務所の参加も視野に入れており、残高確認以外の監査業務についても共通化していく可能性があるそうです。
残高確認システムの共同開発について、四大監査法人が連名でニュースリリースを配信しています。
- 4監査法人が「残高確認システム共同プラットフォーム化推進協議会」を発足(有限責任監査法人トーマツ)
今後共同システムが稼働して確認状の発送・回収作業がなくなれば、新人にも会計士のスキルが発揮できる業務が割り当てられることでしょう。今までだと、単純作業が嫌で監査法人をやめて転職する会計士もいましたが、今後はそういった理由での退所は減るのではと期待されます。
新会社“デロイトトーマツキャピタル”設立。ベンチャー投資1号案件
- デロイトトーマツ、ベンチャー投資に進出 収益源を多様化(日本経済新聞 2018年5月15日付)
コンサルティング業務やアドバイザリー業務で会社の成長をサポートしてきたデロイトトーマツが、投資事業に進出したようです。
ベンチャー投資専業の新会社“デロイトトーマツキャピタル”を設立したという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
デロイトトーマツグループはベンチャー企業への投資に乗り出す。5月中旬に1号案件として言語処理能力に強みを持つエモーションテック(東京・千代田)に数千万円を出資する。IT(情報技術)の浸透で主力の監査業務の低コスト化が進むなか、より付加価値の高いコンサル事業の収益力拡大を急ぐ。
引用元:デロイトトーマツ、ベンチャー投資に進出 収益源を多様化(日本経済新聞 2018年5月15日付)
記事によるとデロイトは、エモーションテックの課題解析技術を自社のコンサルティング業務に取り入れて、サービスの質の向上を図っていくそうです。
デロイトトーマツグループは、監査法人トーマツによるIPO監査やトーマツベンチャーサポートのベンチャー支援などで、ベンチャー業界での実績やネットワークを有しており、そういった部分とのシナジーも期待できるかもしれません。
一方で、監査法人の独立性の問題もあるため、監査法人の監査先への出資を禁止するなどいくつかの投資基準も設けるそうです。
これまでの監査やアドバイザリーといった事業に「投資」という新しい事業が加わり、今までの監査法人のイメージから、全方位的なサポートができるコンサルティング業のカラーが強まる一方、独立性との兼ね合いなどからいかにバランスをとりながら投資のリターンを生んでいけるか、今後の展開に要注目です。
タクシーでカッター所持し公認会計士逮捕
- タクシーで「ピストル持った部下が…」と自衛隊員かたり虚偽通報 カッター所持、公認会計士逮捕 兵庫県警(産経WEST 2018年5月9日付)
社会的な信用を必要とする立場にいるはずの会計士が、まさかの事件を起こして逮捕されたそうです。
タクシーに刃物を持ち込んだとして、兵庫県警伊丹署などは9日、銃刀法違反の疑いで、大阪府豊中市の公認会計士の男(66)を現行犯逮捕した。容疑を認めている。
引用元:タクシーで「ピストル持った部下が…」と自衛隊員かたり虚偽通報 カッター所持、公認会計士逮捕 兵庫県警(産経WEST 2018年5月9日付)
記事によると、逮捕された男性会計士はタクシーの中から「自分は自衛隊員である。ピストルを持った部下が出ていった」と虚偽の110番通報を行っており、「精神的に混乱していた」と供述しているそうです。
タクシーの運転手に被害がなかったのが何よりの救いです。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)