日経新聞に会計士協会が抗議、公認会計士取得年齢の引き下げ、監査法人ローテーション制度…など3件:今月の会計士業界ニュース(2018年1月その2)



2017年12月23日から12月25日にかけて、公認会計士資格取得関係、倫理規則改定関係、監査法人の交代制に関する複数のニュースがリリースされています。

公認会計士資格取得の最低年齢が18歳に引下げ、倫理規則改正で公認会計士に規制当局への通報義務発生か?、監査法人ローテンション制度のその後に関する記事など幅広くご紹介します。

公認会計士の最年少が18歳に。2022年4月から改正法施行見通し

以前は大学の教養課程が終わらないと受験できなかったので、二次試験に合格しても、実務補修を終えて公認会計士になるのは20歳を過ぎてから。その後の改正で受験資格はなくなったものの、公認会計士資格はやはり20歳にならないと取得できませんでした。

公認会計士資格は取れていなくても、監査法人に勤務すれば同期にヒケをとらないお給料はもらえるのですが。会計士試験の人気低迷の中、年齢制限が下がればより若い世代が受験できることになり、受験生が増えて人気が戻るきっかけになるかもしれません。

朝日新聞DIGITALより、公認会計士の資格取得年齢の改正に関する記事がリリースされています。

成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案に関連して、政府は公認会計士などの専門資格を取得できる最低年齢を現在の20歳から18歳に引き下げる方針を固めた。一方、飲酒や喫煙、公営ギャンブルができる年齢は現在の20歳以上に据え置く方向だ。

引用元:公認会計士などの資格、18歳で可能に 民法改正案(朝日新聞DIGITAL 2017年12月23日付)

記事によると、公認会計士以外にも、行政書士・司法書士・社会保険労務士などが年齢引き下げの対象になるそうです。2022年4月に改正法案が施行される見通しとのことです。

専門資格の早期取得が可能になれば、会計士を目指す学生が増えそうですね。

ここで疑問なのが、高校生でも公認会計士になれるようになれば、その後の高校生活や大学進学はどうなるのか。今まで大学生の非常勤会計士制度はありましたが、高校生非常勤会計士の制度も作られるのでしょうか。監査法人の対応も気になるところです。

「倫理規則の改正で違法行為通報」の報道に会計士協会が抗議

昨年は不適切会計問題を受けて、監査法人が批判を浴びた一年でした。ガバナンスコードを導入して、監査法人の改革も行われました。

ところで、投資家などステークホルダーは監査法人の何を批判していたのか。それは不正を見逃したことではなかったでしょうか。財務諸表の適正性を監査するのであって、積極的に不正を見つけるのが監査ではないのですが、会計士でなければそういう期待を含んだ誤解もあるでしょう。

これに関して、会計士協会が倫理規定を強化して違法行為を通報することになったとする記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

公認会計士の職業倫理に関する規則が厳格化される。2019年4月から会計士は監査を請け負う顧客企業で違法行為を発見した場合、監督官庁などへ通報しなければならない。企業の相次ぐ不祥事を受けて会計士のチェック機能を強化する狙いだ。ただ、どこまで実効性を高められるか、会計士の間でも戸惑いの声が聞かれる

引用元:監査外の違法行為も通報せよ 会計士の倫理規定強化へ(日本経済新聞 2017年12月24日付)

記事によると、会計士は違法行為やその疑いがある場合、企業の経営者や監査役と協議するだけではなく規制官庁に通報するように倫理規則が改定されたとしています。また2006年に試験を簡素化したことで会計士が勉強不足になっているとも指摘しています。

規制官庁への通報が業務となるなら、会計士本来の業務とはかけ離れた責任を負うことになります。また違法行為かを判断するためには、クライアントの事業が携わる法令法規に関する知識が求められることになります。

監査人の責任が重くなれば、監査法人から他の業界への流出に拍車をかけることになりかねません。本気で実行するなら、適法性監査人など別の資格を作り監査の仕組みを再考する必要があるのではないでしょうか。

公認会計士協会から抗議も

この日本経済新聞の記事に対して、日本公認会計士協会では以下のとおりコメントを発表しています。

現在改正作業を進めている倫理規則では、会計事務所等所属の公認会計士が、公認会計士法に基づく業務を実施する過程で企業の違法行為に気付いた場合には、経営者や監査役等と協議するなどの対応を求めるものであり、規制当局への通報は、法令(金融商品取引法第193条の3)で要求される場合を除き求めるものではありません。なお、守秘義務の取扱いについては、公認会計士法及び倫理規則の規定に従います。

引用元:本日の一部報道(違法行為の通報)について(日本公認会計士協会 2017年12月25日付)

協会は以上のコメントとともに、報道の訂正を求め抗議したとしています。

なお、『違法行為への対応に関する指針』の公開草案の第1章総則の1では、違法行為は「発見することを要求するものではない」と明記されています。また、3では金融商品取引法第193条の3により意見の申出を行うべき場合に該当するか検討し、該当する場合は金融庁長官に書面で提出することを求めています。

監査法人の交代制。実現可能性は

会計監査の在り方に関する懇談会で議論されてきた監査制度改革。監査法人のガバナンスを確立しマネジメントを有効に機能させていくために、ガバナンスコードが導入されました。

改革の2本目の柱として、監査法人のローテーション制度が議論されています。2017年7月に『監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告) 』が公表されていますが、その後の進展はどうなっているのでしょうか。

監査法人ローテーション制度に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

日本でも議論が進んでおり、同じ企業の監査を継続できる期間に年限を設ける案が検討されている。さらに会計士資格そのものを更新制にすべきだとの意見や、報酬の受け取り方を変えるべきだとの議論もある。会計士は企業との関係でより緊張感を持つよう求められそうだ。

引用元:監査法人の交代制も検討 継続に期限も(日本経済新聞 2017年12月25日付)

記事では、会計士の倫理規則の改定にあわせて、国際的な倫理規定の見直しや、独立性確保の切り札となる監査法人の交代制に関する導入が広がりつつあることを伝えています。

2016年に先行導入したEUの事例ではローテーション制度導入による混乱は見られないと報告されています。この流れからすると、日本でも導入となるのでしょうか。独立性は確保されるものの、監査法人・企業双方の負担が避けられないローテンション制度。改革が実行されるのか、目が離せません。

(ライター 大津留ぐみ



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【大津留ぐみ:公認会計士・税理士/会計士・税理士専門ライター】 大学在学時にシェイクスピアを学んだことをきっかけに劇作家を目指すも挫折。編集プロダクションで編集やライティング業務に従事した後、公認会計士試験にチャレンジし合格。大手監査法人の東京事務所にて監査業務、財務デューデリジェンスなどに従事。 その後、フリーランスの公認会計士として非常勤監査、税理士法人の社員税理士として税務業務に従事しつつ、大津留ぐみのペンネームでライターとしての執筆活動にも従事。ライターとして、お金、社会保障、会計、税務などに関する記事を執筆。また、2児の母となったことをきっかけに、子どもの貧困や教育格差、子どものイジメに関する記事なども執筆。現在は、株式会社ワイズアライアンスの専属ライターとして会計・税務の記事を執筆しつつ、会計事務所にて内部統制業務にも従事するパラレルワーカー。公認会計士・税理士。

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