トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター開所、監査法人の交代が急増…など3件:今月の会計士業界ニュース(2018年1月その3)

2017年12月27日から2018年1月7日にかけて、トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター開所、監査法人の交代が急増しているニュース、公認会計士の“監査”離れなどに関する複数のニュースがリリースされています。

2017年12月に他の監査法人に先駆けて開所したトーマツ監査イノベーション&デリバリーセンターのその後、監査法人の交代が1割急増した原因、公認会計士5人が語る監査現場の現実に関する記事など幅広くご紹介します。

トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター開所。働き方改革の行く末は

昨年2017年12月に監査業務の専従部隊を発足するとニュースリリースした監査法人トーマツ。品質向上と業務の効率化を目指して、会計士ではないスタッフが会計士の知識がなくてもできるデータの入力・集計・チェック作業を行うというものです。

トーマツの成功いかんでは自分の法人で同じ仕組みを取り入れたいと考える監査法人も多いのではないでしょうか。そのためには、今まで会計士が行っていた業務を非資格者が行って支障を来たさないのか、また、監査業務は効率化されるのかなど気になるところですね。

トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター(AIDC)が開所されたましたが、運用状況はどうなっているのでしょうか。2017年12月に開所したばかりのAIDCに関する記事を、DIAMOND onlineがリリースしています。

AIDCは2017年11月から社員のトレーニングを開始しており、今期3月決算(2018年3月)に対応する人員はすでに確保済み。現在はPCデスク30席が稼働、続いて2018年11月までに150席、2019年11月までに250席の体制を目指す。

引用元:トーマツが千葉で始める 監査業務のイノベーションと働き方改革(DIAMOND online 2017年12月27日付)

記事によれば、標準化した業務をAIDCに集中することで、2021年5月までにトーマツの公認会計士が関与する年間業務時間の10%を補完できるようになるそうです。

分業化で招きかねない情報流出や作業ミスへの対応策

監査業務が効率化されたとしても、会計士と同等の専門知識や守秘義務を持たないスタッフを採用することで、何らかの支障が起きないのか気になるところです。記事によると以下のような対策がなされているようです。

システムは、監査業務のデジタルトランスフォーメーションと高度なセキュリティを実現する情報テクノロジーで構築されている。執務スペースにあるPCブースの端末は、通常のPCとは異なり、ユーザー側の端末の機能は必要最小限にとどめ、サーバー側で処理を行なう仕組みになっている。すべての設定をサーバー側で管理する「ゼロ・クライアント」を基本に作られているため、端末に一切のデータ(作業した文書やログデータなど)が残らない。

引用元:トーマツが千葉で始める 監査業務のイノベーションと働き方改革(DIAMOND online 2017年12月27日付)

記事によると、「ゼロ・クライアント」方式というシステムを採用することでデータがユーザー端末に残らない仕組みになっているとともに、携帯電話なども持ち込み制限することで、情報の流出に備えているそうです。

先陣を切って改革を行うだけあって体制は万全のようです。本格稼働となる繁忙期を何事もなく乗り切れば、追随する監査法人も出てきそうです。

ところで、定型化された業務を行う職業はAIに淘汰される職業と言われていて、会計士も含まれていることが話題になっていますよね。ですが会計士の業務は定型的な部分もあれば創造的な部分もあります。

AIDCの導入は会計士業務から定型化された部分を切り取ることでもあります。今まで作業に追われていた会計士も、専門知識と企業への対話力だけで勝負する時代を迎えました。AIDCの導入は、会計士の真価を問う改革にもなりそうです。

監査法人交代が昨年比1割増

不正を見逃した監査法人に監査してもらっても金融市場から信頼してもらえないので、監査法人を交代したいと考える企業は多いでしょう。

一方の監査法人側も、指導しても改善しない企業とは契約を打ち切ることがあります。またリスクが高いと多くの監査時間がかかりますが、きちんとタイムチャージできなければ監査法人の経営が立ち行きません。正当な報酬を企業が認めない場合も辞任する可能性があります。

このような諸々の事情で監査法人を交代した企業が昨年1割増になったとする記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

上場企業の決算書が正しいかどうかをチェックする監査法人の交代が相次いでいる。2017年は124社と前年に比べ1割(13社)増えた。東芝の会計不祥事を見抜けなかった新日本監査法人を代える企業が多いのが特徴だ。監査法人側から自ら契約を断るケースも出始めた。会計監査に対する投資家の信頼が揺らぐ中、監査法人と企業の蜜月ともいえる関係に変化の兆しが出ている。

引用元:監査法人との蜜月に変化 交代実施企業、昨年1割増 東芝会計不祥事受け (日本経済新聞 2018年1月7日付

記事によると、監査法人の変更は2017年に急増しており、特に新日本監査法人から代わる動きが目立っているそうです。また適時開示で公表される監査法人の変更理由についても言及しており、企業と監査法人とで意見の相違がなかったかなど具体的な理由を盛り込むべきだと指摘しています。

決別するからには、企業、監査法人双方の言い分が一致しないことが多いでしょう。具体的に理由を公表すれば、大人の喧嘩では終わらない事態に発展する可能性も。そしてそのとき痛手を負うのは、監査法人という気がしてなりません。

“監査”離れ。公認会計士5人が語る現実

AIにとって代わられる職業、金融市場から非難を浴びる監査法人、受験者数の減少、監査業務に関わらない会計士。公認会計士の最近のニュースは、どれもマイナスなイメージのものばかりです。難関試験を受験すると決めた時は、会計士の仕事に憧れを持って努力していたと思うのですが。

このような公認会計士のイメージは本当なのでしょうか。現職の5人の公認会計士に“会計士の現実”についてインタビューした記事が、Business Journalよりリリースされています。

――人手不足は、受験者や合格者の減少だけが原因なのでしょうか?
A 優秀な人からどんどん辞めているということは聞きます。東芝を監査していた新日本監査法人が行政処分を受けて、公認会計士協会からも処分された。かつて同じく粉飾決算が発覚したカネボウを担当していた監査法人は消滅してしまいました。「泥船に乗っているわけにはいかない」ということで、優秀な人は独立したりコンサルティングのほうに行っている傾向があります。

引用元:公認会計士は「泥船」職業?「監査」離れ鮮明…ひたすらマニュアル仕事、トチればクビ(Business Journal 2018年1月7日付)

記事では、就職環境は良好で選ばなければ誰でも監査法人に入れる一方で、マニュアル通りの業務を行っているので独立するための経験が積めないことを指摘しています。また、仕事がつまらなくなった上に訴えられるリスクが高くなっているので、会計士が監査法人から離れる傾向にあるそうです。

現職の会計士の実感は残念ながら報道通りのようです。もしかしたら、AIに淘汰される前に、監査法人に勤める会計士自体がいなくなってしまうのでは…、そんな危惧の念を抱かざるをえません。

(ライター 大津留ぐみ

この記事の著者

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【大津留ぐみ:公認会計士・税理士/会計士・税理士専門ライター】 大学在学時にシェイクスピアを学んだことをきっかけに劇作家を目指すも挫折。編集プロダクションで編集やライティング業務に従事した後、公認会計士試験にチャレンジし合格。大手監査法人の東京事務所にて監査業務、財務デューデリジェンスなどに従事。 その後、フリーランスの公認会計士として非常勤監査、税理士法人の社員税理士として税務業務に従事しつつ、大津留ぐみのペンネームでライターとしての執筆活動にも従事。ライターとして、お金、社会保障、会計、税務などに関する記事を執筆。また、2児の母となったことをきっかけに、子どもの貧困や教育格差、子どものイジメに関する記事なども執筆。現在は、株式会社ワイズアライアンスの専属ライターとして会計・税務の記事を執筆しつつ、会計事務所にて内部統制業務にも従事するパラレルワーカー。公認会計士・税理士。

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