来る2016年2月20日(土)に第5回・公認会計士ナビonLive!!in大阪が開催されます。
本記事では第5回の開催に向けて第4回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。
第4回 公認会計士ナビonLive!!のトークセッションでは、「公認会計士×会計系スタートアップ」をテーマに、会計・バックオフィス系スタートアップを起業した4名の起業家が、会計業務とテクノロジーの関係や会計業界の未来について語りました。
※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。
第4回 公認会計士ナビonLive!! トークセッション:公認会計士×会計系スタートアップ
【開催日時】 2015年8月29日(土)
【テーマ】 公認会計士×「税務」「会計系スタートアップ」
【第2部トークセッション】 公認会計士×会計系スタートアップ
【登壇者(敬称略)】
- 印具 毅雄(ツバイソ株式会社 代表取締役 CEO 技術系会計士)
- 高谷 元悠(株式会社BEC CEO/公認会計士試験合格)
- 工藤 博樹(メリービズ株式会社 代表取締役)
- 畠山 友一(株式会社ビズグラウンド 代表取締役)
ルーチン業務は自動化させてコミュニケーションに特化、会計士起業家が見据える士業の未来
■高谷 元悠(株式会社BEC CEO/公認会計士試験合格)
大学3年次、2011年に公認会計士試験論文式に合格。在学中にスタートアップ4社でインターンを経験し、WEBサービスの企画・営業、Ruby on Railsによる開発、収支計画書・事業計画書の作成を担当。2013年1月よりあずさ監査法人に勤務、IPO支援、内部統制構築支援、M&A、上場企業の監査を担当。2014年1月、BEC Inc.を創業。神戸大学経営学部卒。
サイバーエージェント・藤田氏に起業を宣言!会計士から起業家へ
会計士起業家として、起業家・中小企業のためのバックオフィス自動化ツール Gozal(ゴザル)を運営する高谷(たかたに)氏。あずさ監査法人をわずか1年で辞め、起業に踏み切った経緯を語ってくれた。
もともと大学3年の時に、公認会計士論文式試験に合格することができて、残りの4年生の1年間が暇だったので、いろんなベンチャーで簡単なCFO業務やエンジニアとしてプログラミングをしてみたりとか、テレアポや営業にチャレンジしていました。
その経験をもとに、あずさ監査法人のIPOの事業部に入社して、そこで監査やデューデリなどをしていましたが、入社して10カ月ぐらい経ってサイバーエージェントさんが主催したビジネスキャンプがあって、それは3ヶ月で自分でビジネスプランを作って藤田社長にプレゼンができるというイベントだったのですが、自分の力を試してみようと軽く参加してみました。
そこでGozalというサービスの原型となるビジネスプランを藤田社長に発表させて頂いたのですが、本当に運良く優勝という形で賞をいただきました。その祝賀会で藤田社長と1対1で飲める機会があったのですが、藤田さんに“もし本気でやるなら出資するよ”とお話をいただきまして、その時、僕は酔っていたのもあるのですが(笑)、その場の勢いで“やります!”と言って、次の日にあずさ監査法人に退職届を出し、3ヶ月後に株式会社BECを設立しました。
なので、起業に踏み切ったのには、結構、勢いもあったのかなとも思います。
Gozal(ゴザル)とは?士業と起業家をつなぐクラウドツール
高谷氏が開発・運営するGozal(ゴザル)は、ひと言で表現すると、公認会計士や税理士、弁護士、弁理士などの専門家にクラウド上でチャット相談ができ、相談したうえでワンクリックで業務の発注や支払い・サービスの納品などができるWEBサービスだという。(※注:登壇時。現在はさらに機能が追加され、バックオフィス業務のタスク管理なども行えるようになっている。)
高谷氏はGozalのアイデアを思い付いたきかけは起業家たちとの交流経験にあったと語った。
あずさ監査法人の東京事務所に入社が決まって関西から東京に引っ越してどこに住もうか考えた時に、六本木一丁目駅の近くに20代前半の起業したい人たちが集まるシェアハウスがあるという話を聞きまして、それはちょっとおもしろそうだと思ってそこに入居しました。そして監査法人にいる時はそこに、起業したい人や起業している人が集まって、男ばかりなんですけど(笑)、13人ぐらいで住んでいました。
監査法人に勤めてることは他の同居人の人たちには言っていたので、彼らは起業したけど経理や法務とか労務とか全然分からないので僕にやって欲しいという話をしてくれたり、僕も一緒に考えて手伝ったりしていました。
そこで、若い人は特にそうなんですけど、起業家の人たちはデザインやプログラミングやビジネスアイデアに関してはみなさんモチベーション高くスキルを上げていっているんですけど、法務、労務、財務とかの知識はない人が多いですし、今後もそこを身に付けていきたい方は結構少なかったりして、かといって、若い人たちはそういう弁護士さんや税理士さんに繋がりがあるかと言えばほとんどない方が多いし、そもそも税理士と弁理士と弁護士の違いも分からない、自分の課題を誰に相談したらフィットするのか分からない、それはすごくもったいないなというのがありました。
一方で、士業側、弁護士さんや税理士さんなども結構集客に困っているという話も聞きましたし、電通さん調べで法律課題に直面した人の8割が専門家に相談せずに終わっているというデータもあって、結構マーケットが埋もれているんだなというところに業界の課題を感じました。
僕らがやっているGozalというサービスは、起業家の方やフリーランスの方が自分の課題を投稿しておけばそれに合う専門家から提案が届くという形ですので、起業家側からすれば課題をとりあえず投げておけば専門家から解決策が届き、専門家を探さなくて良いというサービスです。
もう一方の士業側からすると、弁護士さんが営業のためにガンガンテレアポをするのは難しいと思いますが、そうではなくて案件が流れてきていますので、それに提案をして、まず一度相談して頂いて、あとは普通の営業プロセスでやっていく、そういう場所があったらいいなと思ってGozalを始めて、徐々に大きくしているところです。
士業の未来はどうなるのか?士業だけクラウドの波が入ってこないわけはない
これからの士業はクラウドやITとどう付き合っていくべきなのか?その問いに対して高谷氏は「これからの士業はコミュニケーションがキーになるのでは」と語った。
士業とITの相性ってどうなのかを考えた時に、まず世の中の流れというのがひとつあると思っていまして、士業以外の領域だと、どんどんクラウドソーシングとかクラウドツールが普及している中で、士業の領域だけクラウドの波が入ってこないわけはないと思っているので、全体的な流れとしてクラウドツールは使っていくべきではないかなというのがひとつあります。
あと、もうひとつは、テクノロジーが発展していくと、人と人とのコミュニケーションの部分が唯一残る価値なのかなと思っています。人工知能で会計士の仕事がなくなるとか話題になっていますが、例えば、freeeさんやMFクラウドさんといったクラウド会計ソフトさんが経理の自動化を検討されていて、ルーティンワークの部分は将来的にはシステムがやっていく方に時間が掛かろうともなっていくんじゃないかと。
ですので、ルーティンワークを自動化するのは積極的に取り入れていかなくてはいけなくて、それでリソースの負担が減った分を人としての部分、例えばコンサルティングとかネゴシエーションとか落とし所を見つけるような調整・提案とか、士業の仕事というのはそういうコミュニケーションの部分に特化していくのが流れとしてはあるんじゃないかなと思っています。
クラウド時代に広がる会計士の独立のチャンスとは?
■畠山 友一(株式会社ビズグラウンド 代表取締役)
1978年東京都出身。2001年富士通アドバンストエンジニアリング入社。2004年に株式会社リクルートに転職し、FNX(FAX一斉同報サービス)を中心に営業を担当し8千社あまりの法人へ提供する過程で、中小企業が自社の本業に集中できる環境を作るため、業務効率化、マーケティング支援の業務に従事。2011年グリー株式会社入社。グリーアドバタイジング株式会社の代表取締役を経て、2013年10月に独立。株式会社ビズグラウンドを設立し、代表取締役社長に就任。自身が小規模事業者として苦労したことや工夫したことなどをサービス化した「Bizer」を2014年5月にリリース。
企業のバックオフィス業務を自動化するツール・Bizer(バイザー) とは?
新卒で3年ほどSEの経験をした後、リクルートでの営業、GREE子会社社長の経験を経て、クラウド型バックオフィス・Bizer(バイザー)を起ち上げた畠山氏。
Bizerは、クラウドを利用し、専門知識のない人でもバックオフィス業務を効率的に利用できるサービスだ。
畠山氏はGREEを退職した際、何をするか決めないまま勢いで起業したが、その際に自分が困った法人の設立や設立後のバックオフィス業務をWEBで行えるようサービス化したのがBizerだと語った。
Bizerでは、会社に必要な総務や人事・労務、経理、法務など“バックオフィス業務”と言われる作業を、各作業ごとに何をすれば良いのかWEB上でtodoリストやツールリストが出てきて、それに従って作業を行えば専門知識がない人でも簡単に行えるようになっています。
また、例えば、登記や労務関連など作業の過程で役所に提出する書類が必要な場合も、Bizer上で情報を入力するだけで自動生成することもでき、そこで困ったことがあった時には税理士さんや社労士さん、弁理士さんなどにオンライン上でそのまま質問もすることができます。月額2,980円の定額でそういったことができるようにしていて、自分もいちユーザーとして使っているのですが、そういったサービスです。
また、畠山氏は、「Bizerに登録している税理士の8割が公認会計士出身の税理士であること」「WEBサービスと言っても必ずしも東京の先進的な士業や起業家だけが利用しているものではない」ということも挙げた。
Bizerの機能の中で会計士さんや税理士さんに関わるところは相談部分など一部なのですが、税理士さんにはかなり登録して頂いていて、そのうち8割ぐらいが会計士から独立して税理士業務も行っているという方になっています。税理士以外にも士業の方々が数10名いらっしゃいますが、東京は3割ぐらいで、7割は東京以外の全国に散らばっていて、ユーザーさんも500社以上いますが、同じく全国の都道府県におられます。
士業の仕事には専門家がすべき業務とそうでない業務が混在している
畠山氏はBizerの運営経験から士業の仕事には「専門家がすべき仕事とそうでない仕事が混在しているのが現状だ」とも指摘した。
私の場合、起業するときに先輩起業家の方々と話していろいろアドバイスをもらった中でだいたいの人が税理士さんと契約していたんですね。
税理士さんに毎月3~5万円ぐらい顧問料を払っているという話を聞いていて、何をお願いしているのか聞くと、みなさんレシートを投げて記帳代行をお願いしているとか、困ったことがあったら聞くよとか、そんな感じだったので私も税理士さんは頼まなくてはいけないものだと思って何人かお会いしてみたんですけど、2年前ぐらいに起業したので、ちょうどMerryBizさんですとかfreeeさんですとか、会計周りのWEBサービスも出てきていて、記帳とかは数千円でお願いできちゃうのに、まだお金に余裕がない起業家が顧問の先生に毎月3万円とか5万円とか払うのは私の中でも何となくしっくりこなくて、ITが解決すべきところをもうちょっと住み分けてもいいのかなと感じたのが最初のきっかけです。
Bizerでは、例えば、会社を作るための法定書類の自動生成とか従業員が増えて社会保険に入る時に社労士さんにお願いすると数千円~数万円かかってしまう書類が、情報を入れればピッとできてしまいます。
こうゆう話をするとよく士業の仕事を奪うサービスだと言われることもあるのですが、そうではなく、士業の方はプロフェッショナルですごくノウハウをお持ちですから、専門家がすべき仕事ではなくて誰がやってもいい仕事はクラウドのITでやってしまえばいいかなと思っています。
実際、Bizerでそういった事務作業ができるようになっていても、そのうち半分くらいには専門家に聞かなくてはいけないことが出てきていて、それをBizerの裏にいる専門家のみなさんが対応してくれてその後は直接の顧客として取引をしてもらっています。
ですので、手順を知っていれば誰でもできるような書類作成のために、独立したばかりの会計士や税理士の方が手間と時間を取られたり、そのために人件費をかけて人を雇ったりすることなく、相談にだけ専念できる、そういった事務業務と専門業務の住み分けをBizerのほうである程度切り分けて、専門家の方々に依頼すべきものを繋いでいくという立ち位置でサービスを提供させて頂いています。
クラウド時代において顧客から指示される会計士や税理士とは?
畠山氏は、BizerのようなWEBやITを活用したサービスが出てくる中で顧客から指示される公認会計士や税理士の特徴を以下のように語ってくれた。
Bizerでは、登録いただいている士業の方には必ず一度お会いさせて頂いてからBizerの中で働いて頂くか決めているのですが、うまくワークしている人というのは、既にBizerで活躍している士業の方の先輩や後輩、同期など紹介で登録された方が多いです。
例えば、Bizerでは相談の回答は24時間以内に行うという決まりになっているのですが、24時間以内にオンラインで相談に回答するというのは、WEBを身近に使っているかというのがあると思います。
LINEとかFacebookとかTwitterとか、そういったサービスを積極的に使っている人にとってはWEBの世界がすごく身近で、スマートフォンでBizer上の質問に回答してくださってる人もいて、会計士や税理士でもそういった人どうしがつながりがあるので紹介された方も活躍されるのでしょうけれど、それくらいのスピード感でやれている人が若い起業家の方々と相性が良いと感じています。
また、畠山氏は、「ユーザー(起業家・企業)こそ士業に対して顕著に反応している」とも語った。
士業の方々のITリテラシーに対してリアクションが顕著なのは、実は、起業家や企業といったユーザーさんの方で、税理士の先生と顧問契約されているのにセカンドオピニオンとしてBizerを使っている方が結構いらっしゃいます。
どんな使い方なのか見てみると、例えば、PayPal(ペイパル)をビジネスで利用して決済を行っているユーザーさんで、ペイパルの計上をどういう風にするのか自分の顧問の先生に聞かれたらしいのですが、その先生の回答が、ペイパルってご存知なかったんでしょうね、“ビットコインとか怪しいから辞めた方がいいですよ”という回答だったそうです。
その方は、これは厳しいということでBizerで相談されたんですけど、Bizerには35歳前後の税理士さんが多いんですけど、その中のひとりがパッと回答したらそれに感動したとTwitterしてくださって、そうゆうのを見ても現在進んでいるIT化やクラウド化は若手の士業の人にはチャンスでもあるんだなと感じています。
freeeさんやMFクラウドさんといったクラウド会計ソフトを使える税理士さんってまだまだそんなに多くはないと思うのですが、そういったところに登録するとそこから仕事が入ってくるとか、独立して“freeeもMFクラウドも使えるよ”と言った瞬間に仕事がどんどん来てすごく忙しいといった話もよく聞くので、世の中がどんどん変わってきている中で、若手の税理士や会計士の方がそれを自分の強みにしてやれるんじゃないかなとすごく感じています。
そう考えると、すごく良い時代になっている気もするので、会計士の方が仮に独立する意向があるなら、クラウドとかWEBサービスに適応していけば上手くやれる可能性は高いんじゃないかなと思います。
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