全自動のクラウド型会計ソフト freee(フリー)の衝撃【シリーズ:会計×イノベーション/第1回】



税理士や公認会計士の増加や日本経済の停滞などの影響から会計業界の閉塞感が叫ばれる中、それを切り拓くヒントはどこにあるのか。公認会計士ナビでは「シリーズ:会計×イノベーション」と題し、複数回に渡り、会計業界に見られるイノベーションを特集していきます。 第1回は全自動のクラウド型会計ソフト freee(フリー)です。

第1回:全自動のクラウド型会計ソフト freee(フリー)の衝撃

2013年5月、日本最大級のベンチャーイベントであるインフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)のLaunch Pad(ローンチ・パッド、事前に審査された新進気鋭のIT系ベンチャーだけが登壇できるビジネスプランコンテスト)にて見事優勝を勝ち取った会計サービスがある。

全自動のクラウド型会計ソフト freee(フリー)

である。

全自動のクラウド型会計ソフト freee (フリー)

審査員から圧倒的支持を得たこのサービスは、『仕訳が自動でできるクラウド型会計ソフト』として注目を集め、2013年3月のリリースから現在までのわずか4ヶ月で約6,500事業所が利用登録し、15万件以上もの仕訳を処理するという快進撃を見せている。

また、Launch Padの優勝後の2013年7月には、ベンチャーキャピタル2社からの2.7億円の資金調達も発表するなど、さらなる成長も期待されるサービスである。

このfreeeは『仕訳が自動でできる』『クラウドである』という点に注目の集まる会計ソフトだが、freeeの特徴や機能はもちろんそれだけではない。freeeの強みやそこに込められた想いについて、開発者である佐々木大輔氏に話を聞いた。

全自動のクラウド型会計ソフト、その機能とは?

freeeは2013年3月、Google出身の佐々木大輔氏が設立したスタートアップであるCFO株式会社(現・freee株式会社)のプロダクトとしてリリースされ、リリースから4ヶ月で6,500事業所が利用登録した注目の会計ソフトである。

まずは、freeeが従来の会計ソフトとどう違うのかを見てみよう。

自動仕訳に代表される業務効率を追求した数々の機能

freeeは『経営者が創造的な活動にフォーカスできるように』とのコンセプトにもとづいて開発された『中小企業・個人事業主のためのクラウド会計ソフト』である。

営業、企画、製造、販売、マーケティング、管理など企業経営に必要な様々な業務を行わなければならない中小企業経営者や個人事業主にとって、経理などの管理業務は必須事項であれ、それに時間をとられすぎるということは決してプラスではない。freeeにはそういった経理や事務などの管理業務の工数を大きく削減し、経営者が営業や企画・開発などより創造的な仕事にフォーカスできるようにとの想いが込められている。

その特徴的な機能には下記のようなものが挙げられる。

●自動仕訳

freeeに関して最も注目されている機能は、取引の明細を入力すれば、システムがテキストの解析を行い、自動で勘定科目を予測するという自動仕訳機能である。この機能によって簿記の知識のない個人事業主や中小企業経営者でも容易に仕訳を行うことができる。

【仕訳入力画面】

もちろん、特殊な取引など推測できないケースもあるが、そういった場合には、表示されるヘルプが入力者の仕訳をサポートし、また、一度、勘定科目を選んで入力するとその作業は記憶されるため、次回からは自動で仕訳が行われるなど、使えば使うほど仕訳の工数が減り、精度も上がっていくという特徴がある。

【仕訳を補助するヘルプ機能】

銀行やクレジットカードのWEB明細との同期

freeeでは、金融機関のオンライン口座やクレジットカードデータとの連携も可能である。(※1)

freeeのアカウントと銀行やクレジットカードの口座をオンラインで同期させることによって、取引データが自動的に取り込まれ会計帳簿を作成する。また、取り込まれたデータはfreeeによって自動仕訳されるため、ユーザーは仕訳結果を承認するだけで記帳も完了してしまう。通帳に印字された取引を会計ソフトにわざわざ手で打ち込むといった手間やCSVを取り込む手間も省くことができる。
※1:未対応の金融機関やカード会社もあり。今後、拡充予定。

【銀行口座やクレジットカードデータとも自動で同期】

請求書作成から入金の消し込みまでを自動化

freeeでは、請求書を作成することができ、その請求書に関する取引は自動で仕訳に反映される。また、銀行口座への入金があると請求データとの紐付けも行われ会計帳簿にも反映されるため、請求書を作成してから、入金を確認し、消し込みを行うという従来あった複数のステップを省略することにも成功している。

また、ここから派生して売掛金の管理も簡単に行えるようになっており、どの取引先に、いつ、どれくらいの売掛金が生じたのかも管理でき、入金があった際にはアラートも表示されるなど、売掛金の状況把握しやすくもなっている。

<従来の請求から記帳・消し込みの流れ>

請求書作成(Excel等) ⇒ 記帳(会計ソフト) ⇒ 入金確認(銀行口座) ⇒ 記帳・消し込み(会計ソフト)

<freeeを利用した場合の請求から記帳・消し込みの流れ>

請求書作成・記帳(freee) ⇒ 入金確認・記帳・消し込み(freee)

 【請求書作成画面】

【freeeで作られる請求書(サンプル)】

青色申告や会社法に準拠した決算書やレポートの自動作成

freeeによって管理される会計データは、個人事業主であれば青色申告に準拠した決算書に、法人であれば会社法に準拠した決算書にワンクリックで加工することができる。

【freeeで作成した決算書(青色申告)】

また、freeeには、作成した会計帳簿から、レポートも自動で作成する機能も実装されているため、取引先や品目ごとの売上高やコストが自動でグラフ化され、ひと目でわかるようにもなっている。

【freeeによって作成される売上レポート】

【売掛金レポートも自動作成】

複数名での同時ログインや編集が可能

freeeでは、同時に複数のユーザーがログインし編集作業を行うことができる。ユーザーの数は3名だが、オプションにより追加することも可能である。そのため、freee上では「経理担当者と経営者」「経営者と会計事務所の担当者」など複数名が同時にログインしてデータを編集したり、質問や回答を交わしたりすることも可能となっている。

【freeeでは複数ユーザーが同時ログインし、編集も可能】

会計データをクラウド上に置くことにリスクはないのか?

クラウド会計ソフトと言うとセキュリティ面が気になる人も少なくないだろう。特に会計データという企業にとって重要なデータを社外に置くことになると、その安全性が気になるのは当然である。この点に関して、佐々木氏は『中小事業者にとっては、セキュリティ対策のしっかりとしたクラウド上にデータを保存するのであれば、自社のPCやサーバに保存するよりもむしろ安全性は高い』と語る。

中小事業者にとってPCにデータを保存する場合、落下や事故によるPC自体の破損、紛失などのリスクが伴い、特にITリテラシーの高い事業者でもなければ操作ミスによるデータの誤消去や外部からの不正アクセスなどのリスクも生じてしまう。一方、freeeでは、サーバには金融機関システムの安全対策基準であるFISC基準(※2)を満たす運用も可能といわれているAWS(※3)を利用しているため、個人や中小事業者が自社のサーバや個人や法人のPCやサーバにデータを保存するよりも高いセキュリティを実現している。また、freeeとサーバとの間での通信やデータ保存は全て暗号化され、外部からの侵入検知やプライバシーの保護に関しても対策がしっかりと行なわれている。そのため、仮にPCが破損したとしても別のPCからログインを行うことができ、また、PCが不正アクセスの被害にあったとしてもサーバに保存されているデータにまで被害が出る可能性は限りなく低い。
※2:公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)が作成した「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」に基づく基準。
※3:Amazon Web Service(アマゾンウェブサービス)。Amazonの提供するクラウドコンピューティングサービス。

freeeはなぜこの短期間で支持を集められたのか?

freeeはローンチから4ヶ月で6,500事業所をユーザーとして獲得し、freee上では累計で15万件もの仕訳が行われているが、なぜこの短期間でこれだけの支持を集められたのだろうか?

佐々木氏はその理由のひとつに「FacebookやTwitterといったソーシャルメディアやブログなどで自ら情報を発信するユーザーが多かった」ということを挙げる。フリーランサーや中小企業経営者などfreeeの初期ユーザーが利用したポジティブな感想をWEB上で共有することによってfreeeは加速度的に拡散していったのが大きな要因とのことである。

しかし、当然のことながら多くの人がソーシャルやブログでシェアしてくれるだけでユーザーが増えるほど会計ソフトの業界は甘くはない。そこにはユーザーのニーズに響いた要因がある。

例えば、ネット上でのユーザーの声を拾ってみると

「Mac(マック)で使える」

「中小事業者にとって自動仕訳が非常に便利」

というキーワードが見えてくる。

●会計ソフト難民を救うMac(マック)対応

現在、IT業界のベンチャー企業やエンジニアやデザイナーたちの間ではMacの利用が主流であるが、弥生会計といった既存の会計ソフトの大部分はMacに対応しておらず、わざわざ会計ソフトのためだけにWindowsパソコンを購入するものもいるなど、Macユーザーが会計ソフト難民となっている状況があった。freeeはそういったユーザーを意識し、Macでの利用に対応、また、ブラウザに関してもGoogle ChromeやSafariに対応するなどITリテラシーの高いユーザーが利用できる環境を整えたことが評価につながったと考えられる。

●事業者にとっては「仕訳=簡単」ではなかった

また、freeeのヒットには、自動仕訳やWEB口座との連携という機能がユーザーにとって非常に便利であった点も挙げられ、実際、FacebookやTwitter上では、freeeのユーザーから「仕訳が楽しい」「便利すぎて感動した」という声が上がっている。

公認会計士や税理士など、会計を生業とする人達にとって仕訳は会計の基礎であり、面倒ではあるが難なくできて当たり前の作業である。しかしながら、経営者や事業者にとっては、仕訳はなるべく行いたくない面倒なだけの作業であり、「仕訳は会計の基礎だから簡単」では決してなく、想像以上に手間とストレスを感じる作業である。その手間を真正面から解消したのがfreeeの自動仕訳だ。実際、freeeによるテストでは、freeeによる自動仕訳と一般の人間が手動で行った仕訳ではその処理の速さに50倍の違いが生じている。そういった経理のプロではない一般ユーザーのニーズに真正面から答えたこともfreeeのヒットの秘訣であったと言える。

ベンチャーCFO時代に感じた違和感、Googleで確信した会計ソフトの未来 

CFOとしての経理経験とGoogleでのマーケティング経験がfreeeを生み出す

freeeの開発者である佐々木氏の経歴は非常にユニークである。一橋大学卒業後、大手広告代理店にてマーケティングを経験し、その後、外資系プライベートエクイティファンドでの投資アナリスト、ITベンチャーでのCFO、GoogleでのGoogle AdWords(企業向けWEB広告)のマーケティングを経て、起業に至っている。

そんな佐々木氏が初めて会計ソフトに違和感を持ったのは、ITベンチャーでCFO職に就いていた時だと言う。

佐々木大輔 freee(フリー)

投資ファンド、CFO、Googleとユニークな経歴を持つ佐々木氏

当時、佐々木氏が在籍していたITベンチャーは従業員20人程度の小規模な企業であったため、CFOであった佐々木氏も自らが手を動かし経理業務を行なっていたが、その際に「会計ソフト(弥生会計)」「Excel」「紙」と経理フローにおいてステップごとに様々なツールが使われることに大きな疑問を感じたという。会計処理は弥生会計で行っているのにも関わらず、資金繰りや事業計画はExcelで管理、経費精算は紙で処理、ベンチャーキャピタルに数字を聞かれた際には弥生会計を(しかも、弥生会計がインストールされている端末にまで戻って)参照しなければならない、、、会計ソフトとExcelで同じデータを二度入力したり、データも一元化されていない、、、非効率としか思えなかった。当然、佐々木氏もExcelでマクロやVBAなどを駆使して業務効率化を図ったのだが、「なぜこういった機能が予め会計ソフトに組み込まれていないのだろうか」と疑問に思ったのが始まりだったと言う。

また、ITベンチャーではプロダクト(レコメンドエンジン)の管理にも携わっていたため、エンジニアと接することも多かったのだが、IT業界のプロダクトはエンジニアによって日々改善、効率化されるのを目の当たりにしたのも大きかったと言う。年に数回しかアップデートされない会計ソフトやITサービスも、WEBサービスと同じスタンスでスピーディーに開発やメンテナンスを行えばより進化させることができるのではないか、、、との気持ちも高まっていった。

その後、佐々木氏はGoogleに転職するのだが、Googleの効率を徹底的に追求したデータマネジメントやITインフラを目の当たりにし、ITサービスのあるべき姿を確信する。Googleの洗練されたデータマネジメントを前に、佐々木氏の脳裏には『会計ソフト業界もこういったノウハウをもとに、より効率的な方向に進化していくのだろう』との考えがよぎったと言う。

しかし、その後、佐々木氏がGoogleに在籍して5年が過ぎても残念ながら会計ソフトに大きな進化は見られなかったのである。

また、佐々木氏にはGoogleでの仕事を通じてもうひとつ感じていたことがあった。それは日本の中小企業に関するマクロ指標が弱いということだった。佐々木氏は、GoogleではGoogle AdWordsのアジア地域のマーケティングを担当していたのだが、マーケティング調査のためにアジア各国の経済指標を分析すると、東南アジアなどの新興国と比較して日本は開業率も低く、また、今後の高齢化や労働人口減少なども考慮すると、日本の将来は決して明るくないという現状を感じていた。このような状況では当然のことながら、外資系企業の投資は日本には向かわず、他のアジア諸国に向かってしまう。このままでは日本経済は縮小の一途となってしまう。この状況をなんとか打開できないだろうか…

そういった状況にいたたまれなさを感じていた佐々木氏が下した決断は、自らが起業家となること、そして、日本の中小企業の経営管理に貢献するサービスを自らが開発することだった。

日々進化する会計ソフト、freeeの進化をドライブさせる精鋭チーム

起業、そして、freeeの開発を決めた佐々木氏は、現在、取締役を務める横路氏を共同創業者として誘い、freeeのプロトタイプを開発、米国の大手ベンチャーキャピタルであるDCMから5,000万円の資金を調達し、クラウド会計ソフトの開発へと本格的に動き始める。

2012年7月にfreeeの運営母体であるCFO株式会社(現・freee株式会社)を設立して1年、現在、freeeは7名のメンバーによって開発・運営を進められている。

全自動のクラウド型会計ソフト freee (フリー) チーム

freeeに関しては、佐々木氏のGoogle出身という経歴が注目を集めているが、そこで働くメンバーたちも精鋭ぞろいであり、「素晴らしいメンバーが集まってくれている」と佐々木氏は語る。ソニーでミドルウェアのソフトウェアエンジニアを務めていた横路氏を筆頭に、WEBサービスの開発経験者、上場企業でのERP開発経験者、グローバルメーカーでの経理経験を持つメンバーなど、会計ソフトを通じて会計業界や中小企業経営のイノベーションを実現したいという情熱に溢れたメンバーで構成されている。

そして、そんなメンバーとともに佐々木氏が目指すのは「WEBサービスのスピード感を体現し、日々、進化する会計ソフト」だと言う。

『クラウド会計ソフト』と言うと、データをクラウド上に保存できると言った点にフォーカスされがちであるが、既存のパッケージソフトと比較すると、最も大きな特徴はソフトに日々改善を加えられるという点にある。これまでのパッケージ型の会計ソフトでは、一度発売されると、よほど大きなバグでもない限りソフトの修正は年数回であり、大規模なバージョンアップも数年に1度行われる程度であるが、freeeはクラウドサービスであるため、改善や修正は常時行うことができ、さらにはそれをオンタイムで反映することもできる。システムに不具合があれば即時修正、ユーザーから改善の要望が多い項目があれば即時改善、より利便性の高い企画が挙がれば即時反映、とまさに言葉通り“日々進化”することができ、この積み重ねにより、既存のパッケージソフトとの機能差を広げ、ユーザーの声を聞きながら、ユーザーにとってより利便性の高い会計ソフトとすることを目指している。

公認会計士や税理士とともに日本の中小企業のビジネス効率を高めて行きたい

会計ソフトを語る上で会計事務所との連携は欠かすことができない。既に大手税理士法人やIT分野に強い税理士ネットワークなどからも問合せがあるfreeeだが、会計事務所との連携についてはどのように考えているのだろうか?税理士や公認会計士と言った士業との連携について佐々木氏に伺った。

公認会計士の生み出す付加価値をfreeeによって高めたい

公認会計士とfreeeの接点を考えた時、最も関係があるのは独立開業している公認会計士会計事務所に勤務している公認会計士である。

そう言った公認会計士や税理士にとっては、freeeに対応している会計事務所であることを対外的にアピールすることによって、Macユーザーやエンジニア、IT系ベンチャーなど若い世代の経営者や起業家への訴求ができ、新たなクライアント獲得を期待することができる。また、公認会計士や税理士が自分自身の確定申告(青色申告)を行う際にもfreeeを活用することもできるだろう。

しかし、そう言った短期的なメリットを得るだけでなく、公認会計士がfreeeを活用することによって、サービスの付加価値をさらに高め、中小企業のさらなる発展につなげていって欲しいと佐々木氏は語る。

現在の会計事務所業界は、残念ながら景気が良いといえる状況ではない。特に、記帳代行や税務申告書の作成代行と言った事務代行業務ではバリューが発揮できず、そう言った昔ながらの会計事務所は徐々に淘汰されつつもある。とは言え、これからの成長が見込めるスタートアップやベンチャー企業においては、記帳などの事務業務をアウトソースしてしまいたいというニーズもあり、会計事務所が成長企業の顧問になるためにはそう言った利益率の低い業務も受けざるを得ないというジレンマも生じている。

全自動のクラウド型会計ソフト freee (フリー)しかし、freeeには会計事務所のそう言ったジレンマを解消し、付加価値ある業務に専念しやすい環境を作る可能性があると言う。例えば、会計事務所のクライアントがfreeeを利用することによって記帳代行を依頼する必要がなくなれば、そのコストをより付加価値ある依頼に振り分けることができる。また、会計事務所が記帳代行を受託するにあたっても、freeeを活用すれば仕訳作業やデータのやりとりの削減につながり、これまでと同じ人数でより多くの記帳代行に対応したり、余ったリソースをより高付加価値なサービスに使うこともできる。

つまり、freeeを活用することによって「事務業務の工数削減」「付加価値ある業務への集中」を実現しやすくなるため、会計事務所の生産性や付加価値のアップにつながる可能性もあるのだ。

そして、この点に関して、佐々木氏は、『freeeの目的は会計事務所から事務業務を奪うことではない。公認会計士や税理士を非効率な業務から開放し、高付加価値な業務に専念しやすい環境を作ることだ。それによる日本の中小企業やベンチャー企業へのインパクトは決して小さくないと考えている。』と想いを語る。

freeeが描くビジョン -日本の中小企業を支えるERPを目指したい

会計ソフト業界において衝撃のデビューを果たしたfreeeであるが、これからどこを目指していくのだろうか?

佐々木氏によると、freeeは『中小事業者のためのERP』を目指すという。

ERPと言っても、SAPやOracleのような大規模なものではなく、中小事業者が安価でライトに利用できるWEBベースのサービスを目指しているという。

具体的には、freeeの機能拡充を進める一方で、iPadなどのタブレット端末への対応請求書管理サービスやPOSレジ、CRM(※4)と言った各種サービスとAPI(※5)での連携を行ない、様々なサービスがfreee上で動く仕組みを導入していく予定だ。
※4:Customer Relationship Managementの略。Salesforceなどの顧客データ管理システムを指す。
※5:Application Programming Interfaceの略。ソフトウェアどうしが連携するためのインターフェイス。

「会計ソフトやERPをタブレット端末で」というと違和感のある人も少なくないと思うが、現在、世界ではタブレット端末の普及が急速に進んでおり、WEB業界でも多くのサービスがPCからタブレット端末に移行した世界を想定し、開発が進められている。freeeが目指すのも中小企業の経営者や従業員がPCだけでなくタブレット端末からも経営データを管理できる世界だ。

また、APIを通じて様々なWEBサービスと連携することにより、freeeは会計だけでなく経営に必要とされる全てのデータが集約されるERPの実現を目指している。これは例えば、POSレジと連携することにより、小売業者がレジで打ち込んだデータがfreeeに同期され自動で会計処理やデータ分析が行われる、また、取引先データを請求書管理サービスやCRMと連携させることによって、請求書の発行作業やダイレクトメールの発送などの顧客フォローに関する情報も共有することができるなど、今まではバラバラに管理されていた様々なデータがAPI連携を通じてfreeeに集約され管理されていくのである。

「会計ソフトが様々なサービスと連携していくというのは違和感があるかもしれないが、IT業界ではAPIを通じてWEBサービスが連携するのはごく当たり前のこと。会計ソフトという全ての企業に必要なツールだからこそ、そこに経営情報が集約される意味があり、会計ソフトだからこそ中小企業のためのERPとなるポテンシャルがある。中小企業が費用面でも時間面でもローコストで経営管理を行うことができ、経営者が本業に集中できる世界を実現したい。」と佐々木氏はその想いを熱く語る。

freeeはこれからの会計業界に何をもたらすのか。

freeeの進化はまだ始まったばかりである。

(終)

全自動のクラウド会計型ソフト freee(フリー)

全自動のクラウド型会計ソフト freee (フリー)



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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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