2019年8月の会計士業界の時事ニュースをお届けします。
8月5日、14日、15日にリリースされた「トーマツシステム投資拡大で営業益減少」「EY新日本とあずさ新理事長、AI時代の戦略語る」「電子地域通貨『さるぼぼコイン』会計士が仕掛け人」の3件のニュースをご紹介します。
システム投資拡大でトーマツ営業益減少
- トーマツ、営業益75%減 19年5月期 システム投資拡大 (日本経済新聞 2019年8月5日付)
IT監査が広がりを見せる中、監査法人の負担が膨らんでいます。
今回、監査法人トーマツのシステム投資拡大が経営成績に与えた影響に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査法人トーマツが5日発表した2019年5月期決算は、営業利益が前の期比75%減の2億5600万円だった。サイバーセキュリティー対策でシステム投資が膨らんだほか、ITエンジニアなど専門人材の採用拡大で人件費が増えた。
引用元:トーマツ、営業益75%減 19年5月期 システム投資拡大 (日本経済新聞 2019年8月5日付)
記事によると、監査業務の高度化などに伴い業務収入は4%増加したものの、システム投資が拡大し営業利益が75%減少したということです。
監査法人トーマツのような大手監査法人でもシステム投資で営業益が大幅に減少してしまい、システム整備に必要な投資を確保するのはかなり難しいようです。今後IT監査が進む中、監査業界全体で利用できるインフラ整備が望まれます。
EY新日本とあずさ新理事長、AI時代の戦略語る
- 大手監査法人、AI時代どう生き残る (日本経済新聞 2019年8月14日付)
7月より、EY新日本監査法人とあずさ監査法人で、新理事長が就任しました。
今回、二人の新理事長へAI時代の成長戦略に関してインタビューした記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
「監査品質の向上と公認会計士の働き方改革を重視している。監査先の企業のビジネスモデルは複雑化してきており、会計士が求められる知識や業務は増えた。経営者との議論に多くの時間を充てるなど、監査のレベルを引き上げたい」(EY新日本監査法人 片倉正美氏へのインタビューでの回答)
引用元:大手監査法人、AI時代どう生き残る (日本経済新聞 2019年8月14日付)
記事によると、片倉氏は女性初の理事長ということで、女性昇進の阻害となる長時間労働の削減や、パートナーに占める女性割合の引き上げ、会計士試験合格者に占める女性比率の引き上げなどを、抱負として語られています。
また、あずさ監査法人の高波理事長に対して、AIによる監査が本格化しつつある中、今後の戦略についてインタビューが行われました。
「(データ分析などができる)デジタル人材は2020年7月に現在の2倍の400人体制に拡大する。同時にテクノロジーを使いこなせるよう、会計士のデジタルリテラシーを高めることも不可欠になる」(あずさ監査法人 高波博之氏へのインタビューでの回答)
引用元:大手監査法人、AI時代どう生き残る (日本経済新聞 2019年8月14日付)
記事によると高波氏は、リアルタイムに会社データをチェックする監査の実現や、監査手続を効率化して残業時間を削減したこと、英国のKPMGへの批判に対しては日本から品質管理体制強化に取り組んでいくことなどが抱負として述べられています。
改革のスピードが求められる時代に、新理事長から時代に即した豊富が多く語られており、今後の改革実行に期待が高まります。
会計士が仕掛け人の電子地域通貨「さるぼぼコイン」
- 古里圭史さん 「お金の地産地消」信組の本領 (日本経済新聞 2019年8月15日付)
最近、監査法人を飛びだして活躍する会計士の話題を目にします。
今回、飛騨信用組合で活躍する会計士に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
飛騨信用組合(岐阜県高山市)の電子地域通貨「さるぼぼコイン」の仕掛け人だ。今でこそQRコードを使うスマートフォン決済アプリは乱立気味だが、同じ仕組みのさるぼぼコインの開始は2017年12月と大手IT企業より早い。岐阜県の高山市や飛騨市などで利用でき、加盟店は1000を超えた。
引用元:古里圭史さん 「お金の地産地消」信組の本領 (日本経済新聞 2019年8月15日付)
記事によると、古里さんは、医学部とミュージシャンの道で挫折した後、肉体労働を経て公認会計士試験に合格した、異例の経歴の持ち主です。転職先の飛騨信用組合では、これまでの経歴で培った現場目線をもとに、とにかく使いやすさにこだわった電子地域通貨「さるぼぼコイン」を発想したということです。
曲折に富んだ経験が、地域経済の発展に何が求められているのか見抜く力となり、飛騨・高山の経済発展に大きく寄与しています。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)