論文式試験を終えた会計士受験生は、試験の合否が気になる一方で、合格後の進路が気になる人も少なくないだろう。そのような中、毎年議論に上がるのが
「大手監査法人がいいのか?それとも、中小監査法人がいいのか?」
「将来、コンサルに行きたいが、最初は監査法人がいいのか、それとも、最初からコンサルティングファームがいいのか?」
といった話題である。
この疑問に関しては、社会人経験のある公認会計士やコンサルタントに聞いたとしても人によって答えは異なるだろう。また、本人が「将来、何をやりたいのか」も進路に関する答えを出すにあたって重要な要素のひとつでもあるだろう。
今回、公認会計士ナビのスポンサーである税理士法人平成会計社様に協力を頂き、会計士試験合格者の就職活動のヒントになり得るひとりの試験合格者の選択を取り上げさせて頂く。
今回の取材に協力頂いたのは税理士法人平成会計社に勤める飯塚千隼(いいつか ちはや)氏だ。
飯塚千隼 (いいつか ちはや)
公認会計士試験合格者
税理士法人平成会計社 第三事業本部
2013年、公認会計士試験合格。東京都立大学卒業後、家業を継ぐために宮城県仙台市に帰郷。その後、東日本大震災をきっかけに公認会計士を志し、2013年11月、公認会計士試験合格。2014年1月、税理士法人平成会計社に入社し、第3事業本部所属。ベンチャー・未上場企業、REIT、不動産ファンドなどの税務・会計コンサルティングに従事。
家業と大震災と公認会計士と -なぜ公認会計士を目指したのか?
大卒後は実家に、ビルメンテナンスの日々
「人間力とかリーダーシップとか、独創力とか、就活してるうちにそうゆうのに疲れちゃったんですよね(笑)」
飯塚千隼氏は少し照れながらそう語ってくれた。
彼は実家のある仙台で育ち、東京の大学に進学。その後、再び仙台に戻り家業を手伝った後に、2014年1月より公認会計士試験合格者として東京の大手税理士法人『税理士法人平成会計社』で働いている。
中小企業から上場企業などの大企業、また、事業会社以外にも病院などの医療機関もクライアントとし、税務・会計のアウトソーシングやコンサルティング、財務を支援するFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)といった仕事に従事する日々だ。
大学卒業後、東京で就職するつもりだった飯塚氏だが、就職活動を行ううちに、社会人のあるべき姿と自らの現状にギャップを感じ、実家に戻り、家業を手伝うこととなる。
実家は、宮城県仙台市のビルメンテナンス会社。飯塚氏の両親と従業員ひとりで、消火器の点検や貯水タンクの掃除などビル設備をおこなう家族経営企業だ。飯塚氏もつなぎ姿で、家族とともにビルメンテナンス業に精を出す日々だったという。
震災をきっかけに、会計士の道へ
家業にはいち社会人として一生懸命に取り組んだ。しかし、働くうちに、飯塚氏の中で徐々に自分の力を試したいという気持ちが強くなっていたという。
とは言え、その気持は漠然としたもので、何かチャレンジした方がいいのかも…と踏ん切りのつかない想いを抱えたまま、ずるずると家業の手伝いを続けていたという。
「このままでいいのか…頭の片隅にずっとそういった想いがありました。」
飯塚氏は語る。
そんな彼の転機となったのは、東日本大震災だ。
震災で地元も大きな被害を受けた。幸い、亡くなった友人はいなかったが、家族をなくした友人もおり、彼の価値観は揺さぶられた。そんな中で、家業も大口顧客が離れ、父親も新しい事業に挑戦したいと考え始めた。
「震災や父の事業に対して無力な自分を見て、もっと自分に力が必要だと感じました。もっと経験を積める環境に自分を置きたい、事業やビジネスに貢献できるような力を付けたいと。震災がなければ踏ん切りは付かなかったかもしれません。」
こうして彼は公認会計士試験へのチャレンジを決意することとなった。
なぜ公認会計士だったのか?
「公認会計士を目指したい」
その意向を伝えた際、幸いにも両親はともに賛成してくれたという。
公認会計士という資格に関しては、企業の経営に関われる資格として大学の頃から漠然と魅力は感じていたがチャレンジに踏み切れず、「麻雀とバイトに明け暮れる学生生活を過ごしてしまった」という飯塚氏。
社会人となり改めて会計士について調べてみると、公認会計士というのは「会社法、経営学、会計・税務など総合的な知識を活かして経営全般の課題を解決できる資格」、また「法律に沿った解釈を行う文系的な仕事だが、一方で、数字をもとに定量的な判断も行う二面性のある仕事を行う」、これこそ自分がやりたい仕事だと確信した。
「会社の経営に興味がある」
「経営に関してもっと詳しくなりたい」
「企業を支える番頭さんのような存在になりたい」
彼の想いを両親は尊重してくれた。
飯塚氏は会計士試験に2年半で合格する。最初の1年は実家の仕事と平行して、残り1年半もアルバイトを行いながら勉強を行い、社会人として自らの最低限の生活費を稼ぎながらの合格だった。
そして、合格後、飯塚氏は地元仙台ではなく東京での就職活動をスタートする。
学生時代に就活の厳しさに打ちのめされた東京。「一流になるのであれば東京だと思った。今度は絶対に東京で一人前になる。」、そう決意し、「もう実家には戻らないくらいの気概を背負った上京だった」という。
会計士1年目から最前線での仕事に従事 -平成会計社の会計士試験合格者採用
2014年1月に平成会計社に入社し、約1年9ヶ月。飯塚氏は現在、どのような仕事に取り組んでいるのだろうか?
彼が所属する平成会計社の第3事業本部は30名で構成され、半分が公認会計士や税理士などの有資格者だ。そんな中で彼が今取り組んでいる仕事は、大きく分けると2つだ。
- 会計・税務のアウトソーシング業務
- 税務顧問業務
である。
クライアント数は約20社で、1:1:1程度の比率で、
- 事業会社(中小企業~上場企業やその関連会社 等)
- 特殊法人(医療法人や財団法人 等)
- 不動産ファンド(SPCやREIT)
を担当しているという。
クライアントは、未上場上の中小企業から上場企業やその関連会社まで幅広く、それにともない業務範囲も多岐に渡る。
中小企業に対しては、会計ソフトへの記帳、毎月訪問しての月次相談、決算や給与計算の支援、財務・資金繰り管理のサポート、税務申告と税務・会計・財務の一連の作業をサポートし、上場企業やREITであれば有価証券報告書やアニュアルレポートのチェック、内部統制の改善などの相談にも対応している。
また、SPCに関しては、ビークルの設立、解散、清算、ファンドが不動産を売却する際の物件価格シミュレーションなどに従事し、普通の会計事務所では経験できない特殊な業務も行っている。
「求めていた力がついていた手応えはある。」
平成会計社での仕事を通じて飯塚氏は理想の姿に近づけているという。
「幅広い業務を経験させてもらっている分、毎月のように新しい仕事があります。若手といえども周囲が忙しい中では教えてもらうだけではなく、自分で調べて対応しなければならないこともあります。
経験したことのない仕事に携わる時には不安もありますが、新しい仕事は面白いし、初めての仕事をこなすことで初見の業務に対する耐性がついたと思います。とにかくできるだけ場数を踏みたかった自分には最適の職場だったんじゃないかなと感じています。」
厳しさの中にやりがいもある環境の中で彼は「たいていの仕事は調べれば対応できるんじゃないか」という手応えを少しずつ感じ始めている。
なぜ平成会計社を選んだのか
「会計士“を”採用したい」と言ってくれた唯一の税理士法人
会計士試験に受かった人間の多くは監査法人に就職する。しかし、飯塚氏は多くの会計士試験合格者と違い、監査法人ではなく税理士法人である平成会計社を選んだ。
彼に「監査法人に就職しようと思わなかったのですか?」と尋ねてみた。
そうすると「監査や開示には興味がなかったので、そもそも監査法人は受けなかったんですよ。」という回答が返ってきた。
企業を支えられるスキルを身に付けたかった彼にとっては、できあがったものをチェックする立場で活躍する監査法人には興味が持てず、会計士試験合格後は、一緒に創り上げていき、支えることで活躍できる税理士法人とコンサルティングファームを中心に就職活動を行ったという。
そんな中、出会ったのが平成会計社だった。
「会計、税務、財務、コンサルティングと幅広い業務が経験でき、会計士としてオールラウンドプレーヤーを目指せる環境、そこに惹かれました。」と彼は平成会計社への第一印象を語る。
また、監査にはこだわらなかったが、会計士であるというアイデンティティは大事にしたかったのだという。
「コンサルティングファームだと大卒の新卒採用も行っており、“会計士”という資格が必須なわけではないと感じました。税理士法人に関しても、公認会計士を採用対象にしているところは他にもあったのですが、どこも“会計士が欲しい”のではなく“税理士資格がとれるから会計士も採用対象にしている”という印象を受けてしまった。」と彼は当時の印象をそう語る。
そんな中、平成会計社には、「公認会計士 “を” 採用したい」という想いがあり、会計士に価値を感じている税理士法人だということが強く伝わってきたのだという。
一度まわり道した人生。どんなつらいことでも頑張れる。
飯塚氏に今の自分の満足度について聞いてみた。
「自分がやりたい仕事はできているけど、お客さんに満足してもらえているかというとまだまだダメだと思ってます。今は成果物を提出できているだけで、本来はそれを超える成果を出すのがプロですから。」
飯塚氏の現在の仕事では、中小企業から大企業まで幅広いクライアントを担当しているが、中小企業の場合は経営者から飯塚氏に直接連絡が来る。
経営者からの相談は会計や税務に留まらず経営の悩みにまで至る。むしろ、会計・税務よりも経営に関する相談のほうが多いという。
例えば、飯塚氏が経理代行を行っているある中小企業では、社長が彼に売上や利益を上げる方法を尋ねる。
“こうやってコストを削減すれば、利益がもっと出ますよ”
“業務のここをこう改善すると事業の効率が良くなる良いと思います”
ベテランの経営者に対し、彼らの悩みを解決する提案ができる会計士が彼の理想だ。
「結果的には、実家で小さい会社の現場を経験したことが経営者の悩みを理解する上での大きな財産になっていると感じている。ただ、今はまだ経営者の悩みに応えきれていない。経営の悩みに対して踏み込んだ提案ができる実力を1日でも早く身に付けてクライアントにもっと価値を提供したい。上司や先輩にはそういった人たちがたくさんいる。」と飯塚氏は語る。
経営者の悩みに対して真に応えられる会計士になることは簡単ではない。つらいことはないのか?彼に尋ねてみた。
「僕の人生は一度まわり道をしたので、腹は括れています。どんなつらいことがあっても頑張れます。」
迷いのない言葉が返ってきた。
「企業を支える番頭さんのような存在になりたい」
飯塚氏のチャレンジはまだ始まったばかりだ。
(終)
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