![]()
2026年2月28日(土)に、東京・茅場町にて第17回 公認会計士ナビonLive!!が開催されます。
本記事ではイベントに先立ち、2025年9月27日(土)に「~公認会計士と専門スキルの選び方~」をテーマに開催された第16回 公認会計士ナビonLive!!より、トークセッション「次世代の会計士たちに聞く、これからの独立・会計ファーム作りとは?」の様子をお届けします。
本セッションに登壇いただいたのは、アパレル・化粧品業界を得意とする株式会社Ri-speKt(リスペクト)の栗林利紗さんと、バックオフィスDX支援を武器にするはてなベース株式会社の世戸口逸人さんのおふたりです。
栗林さんは元々のアパレル好きが高じて自身のアパレル企業を立ち上げ後に、アパレルのスタートアップに参加。世戸口さんはプログラミングスクールをきっかけにバックオフィスのDXにのめりこんだそうです。
ふたりはどのように「好き・得意」を武器に独立し、今戦っているのでしょうか。tokumo会計事務所の安松綾菜さんがモデレーターとして切り込みます。
※本記事の登壇者の肩書・経歴等はイベント登壇時のものになります。
※本記事の内容は公認会計士ナビにてセッションでの発言内容に編集を加えたものとなります。
会計士たちが好きや得意に出会った経緯とは?
安松(tokumo):このセッションでは「次世代の会計士たちに聞く、これからの独立・会計ファーム作りとは?」をテーマに、Ri-speKtの栗林さんと、はてなベースの世戸口さんにお話を聞いていきます。よろしくお願いします。
栗林(Ri-speKt):Ri-speKtの栗林です。私は2014年に公認会計士試験に合格し、トーマツに入社。その際、最初から独立志向だったこともあり、監査ではなくアドバイザリー事業部を希望しました。ただ実務要件の都合もあり、一部は監査の仕事もしています。
その後、2018年に独立して、会計事務所と同時にアパレル企業を立ち上げました。
アパレルの方は従業員は雇用せず、業務委託メンバー数名と小規模に運営していて、2020年に売却しています。
会計事務所は2〜3年ほどひとりで運営していたのですが、知人の紹介もあって、某アパレル会社に、業務委託で経営管理の仕事で参画することに。この会社は当時社員4名ほどでしたが、それから4年程経って社員は100名近くになるなど急成長し、ブランドも注目を集めました。
この経験から組織の素晴らしさを改めて感じ、会計事務所も組織化するべく、現在は採用活動をして、会社を大きくしようとしています。
株式会社Ri-speKt
代表取締役/公認会計士・税理士
栗林 利紗
2014年、公認会計士試験に合格。その後、有限責任監査法人トーマツにて監査業務およびアドバイザリー業務に従事。2018年に独立し、「株式会社Ri-speKt」を設立。スタートアップを中心に、コーポレート体制構築、IPOやM&A支援、税務顧問等の支援を行う。
また、現在は上場準備会社の社外取締役や教育機関・企業への講師業などを行っている。
世戸口(はてなベース):はてなベース株式会社の世戸口です。
私は2019年に公認会計士試験に合格し、新卒で当時のPwCあらた、現在のPwC Japan有限責任監査法人に入所しています。配属されたのは第三金融部で、そこでファンドや投資信託の監査を2年ほど経験し、その後、飲食業界に特化した会計DX事業を営むリディッシュ株式会社に併設するクロスポイント税理士法人に転職しました。
当時はコロナ禍の真っ只中で、仕事は完全にフルリモート。それもあって時間に余裕があり、夜間のプログラミングスクールに通い始めました。そこから「会計とIT・データ分析の組み合わせは面白い」と感じるようになり、会計事務所の業務効率化に取り掛かっています。
その経験を経て2023年に、会計×ITの領域で主にバックオフィスの業務改善を主軸に展開する、はてなベース株式会社を創業しました。
はてなベース株式会社
代表取締役/公認会計士協会準会員
世戸口 逸人
2019年、慶應義塾大学在学中に公認会計士論文式試験に合格。卒業後はPwCあらた有限責任監査法人へ入所。監査法人退職後はリディッシュ株式会社にて人事業務、バックオフィス、事業開発の業務を担当。
2023年2月にはてなベース株式会社を設立。CRMツールと会計ソフトの導入を主事業とし、経営企画室向けに”会計データの見える化”を促す会計BIツールの提供を展開する。
安松(tokumo):会社の従業員数や、クライアントの規模・業種はどのようになっていますか?
栗林(Ri-speKt):正社員は約10名で、業務委託まで含めると約20名です。全員が女性で、平均年齢27歳ほどの若い組織ですね。
Ri-speKtではIPO支援や事業再生、財務・税務デューデリジェンス、資金調達、税務顧問などのサービスを提供していますが、最大の事業は「ハンズオン支援×アパレル・化粧品業界」です。
クライアントの規模は、会社の立ち上げ初期~売上100億円ほどの会社で、平均すると売上20〜30億円規模の会社の支援をしています。
世戸口(はてなベース):はてなベースのメンバーは業務委託を含めて20名ほどで、一部、学生のインターンの人たちも活躍しています。
クライアントは様々ですが、上場準備を始めてショートレビューに入る前の、N-4〜N-3の会社が多いですね。こういう規模のクライアントに何を提供しているかというと、数多あるバックオフィスツールから、クライアントに最適なものを選び、あるべきバックオフィス体制の構築サービスです。業界ではバックオフィスBPRと呼ばれる領域ですね。
例えば、会計ソフトならfreeeかマネーフォワードか勘定奉行か、CRMツールならHubSpotかSalesforceかkintoneかスプレッドシートでいいのか、チャットツールならChatworkかSlackかLINE WORKSかGoogle Chatか、といったことです。
また、会計事務所向けの教育コンテンツも提供しています。会計事務所に入社する方は、特に未経験者の場合は、経理や簿記の知識はあっても、freeeやマネーフォワード、勘定奉行や弥生会計の操作知識がないですよね。そういったものを勉強するためのeラーニング教材を制作しました。
企業にバックオフィスを「コストではない」と思ってもらうには?
安松(tokumo):コーポレート部門は、会社からはコストセンターとみなされることも多いですよね。とすると、企業はそこに積極的に投資をするという意思決定はしにくいかと思います。はてなベースはどういったメリットを提示して営業しているのでしょうか?
tokumo会計事務所 代表/公認会計士・税理士
安松 綾菜
1997年生まれ。2019年公認会計士試験合格。2020年有限責任あずさ監査法人入社後は、大手製造小売業を中心に法定監査、IPO支援業務、ファンド監査業務等に従事する。
税理士法人への転職後、2023年に独立。tokumo会計事務所として、税務顧問、クラウド会計導入支援、経理・内部統制支援などのサービスを提供している。同志社大学商学部卒業。
世戸口(はてなベース):確かに、上場前の企業がバックオフィスに潤沢な予算を投じるケースは多くありません。
僕らは「バックオフィスDX」と呼んでいますが、「バックオフィスに投資すれば、売上が上がる」と思ってもらえる提案が大事だと考えています。
ことスタートアップに関しては、バックオフィスの予算はないけれど、マーケティングには予算はあるというケースは少なくありません。はてなベースがやっているのは、データの流れを整えること。データの流れをキレイにしたら、経営指標が見える化して、管理会計やIRのレポートを出す際に、ちゃんとしたデータをアウトプットできるようになります。
そこまで提案すると、これはバックオフィスへの投資ではなくて、将来的に売上に影響するマーケティングへの投資なんだと思ってもらえる、というわけですね。
安松(tokumo):栗林さんはアパレル・化粧品業界に特化し、世戸口さんはDX特化が強みだと思いますが、ここに至った経緯を教えてください。
栗林(Ri-speKt):そもそも私は、あまり仕事とプライベートをキッパリと分けたいタイプではなく、仕事をするにしても楽しみながらしたいタイプだと自認しています。
また私は高校生時代からアパレルが好きで、将来の夢はSHIBUYA109の店員になることだったほどです。そのため、会計士になって独立し自分の好きなことを強みにしたいと考えたら、アパレルに関わるのは必然でした。

安松(tokumo):先ほどおっしゃっていた某アパレル企業と関係を持てたことにも、アパレル好きだったことが影響しているのでしょうか。
栗林(Ri-speKt):そうですね。当時から「アパレルをやっています」とSNSも発信していて、それを見た会計士の先輩が紹介してくれました。常日頃から発信しておくのは大事です。私もアパレル業界に興味のある会計士は探していますしね。
安松(tokumo):アパレル・化粧品、またはDXに特化することは、営業活動へ繋がっていますか?
栗林(Ri-speKt):営業という意味では、業界特化というよりは、私が最初に入ったアパレル会社が急成長を遂げたことが大きいですね。世の中的にも話題を集めている会社だったこともあって、後々「あの会社にいた栗林さんです」と紹介していただく機会が増えました。
特定の業界の中でめちゃくちゃ頑張って、名前を残すことは、営業面でも有効だと思います。
世戸口(はてなベース):クラウド会計はどれも良いサービスだと思いますが、はてなベースでは主にfreee会計を中心に活用してきていて、それがきっかけでfreeeさんと協業して案件を創出するプロジェクトを立ち上げるに至りました。
また、サイボウズさんのセミナーに登壇するときは「僕らもkintoneを推していて…」と伝えています。各ベンダーさんとしっかりと関係値を築いて、そこから事業化・収益化していくのは方法のひとつとして効果的だと思います。

毎日が文化祭か、数字で評価か
安松(tokumo):次に、採用・組織づくりについて聞かせてください。
個人事業主として仕事をするのと、組織としてサービスを提供するのは、全く異なる仕事だと思います。おふたりはどのように組織づくりをしているのでしょうか。
栗林(Ri-speKt):Ri-speKtは2年前に初めて社員を採用してから、どんどん人が増えていますが、採用はほぼリファラルです。
私は高専や会計士試験予備校で講師をしているのですが、そこの教え子が入ってくれたり、その友達が入社してくれたりしています。また、会社を始める際には、SNSの交友関係をすべて振り返って、関係ありそうな人全員に連絡しました。15年ぶりに連絡した高校の先輩などもいましたね。
ただ、それで今やっと10名なので、さすがにそろそろ限界かなと思っているところではあります。
私は経営者としてまだまだ未熟ですが、それでも組織づくりは大事にしているつもりです。監査法人時代はチームの仲は良かったものの、個人プレーも少なくありませんでした。一方でアパレル企業に行ってみたら、チームが毎日文化祭みたいな感じなんですよね。私はそれが楽しかったんです。
そういった経験もあり、Ri-speKtでも「ファミリーカルチャー」を大事にすることにしました。分業はしすぎず、必ず人と助け合う。メンバーは下の名前やあだ名で呼びあう。こういった家族のような文化の組織づくりを心がけています。

安松(tokumo):会計事務所としては珍しいですね。はてなベースはいかがですか?
世戸口(はてなベース):はてなベースでも採用はリファラルが中心で、求人媒体も使っています。要件は会計人材か、データ分析ができる人材ですね。
また、学生インターンに関しては、会社が曙橋駅付近にあるためか、会社の初期から上智大学や早稲田大学、東京大学の優秀な学生が応募してきてくれました。学生の場合は、インターンを経験したメンバーが優秀な後輩を誘ってくれるので、良い人材が集まるサイクルができており、助かっていますね。
安松(tokumo):採用した後の組織づくりで工夫されている点はありますか?
栗林(Ri-speKt):働きやすい環境を作るのはもちろんで、メリハリを大事にしています。例えば、会計事務所は忙しい時はめちゃくちゃ忙しいですよね。一方で、そうでもない時期には、積極的に休みを取ってもらっています。
また女性が多いということもあって、体調が悪い時は少し時間をずらして出社できるようにもしました。
組織づくりは、メンバーとなるべく意見交換をしながらするようにしています。日頃話しやすい雰囲気をつくっていることもあってか、1on1ではみんな割と素直に意見を言ってくれるので、私も怒られる機会が多いですね(笑)。
世戸口(はてなベース):うちは逆ですね。人事評価制度をつくり、数字で評価するようにしています。
栗林(Ri-speKt):怖そう(笑)。
世戸口(はてなベース):(笑)。確かにそう聞こえちゃうかもしれませんが、実は逆なんです。点数がクリアになれば迷わず昇給できますし、よりやりがいのある仕事に挑戦できる「チケット」が手に入るような仕組みにしています。
はてなベースには「デザインなら誰にも負けません」とか「データ分析を極めたいです」といった、特定のスキルが突き抜けているメンバーも多いんですよ。
その個性を埋もれさせたくないので、「じゃあ、その得意分野で圧倒的な成果を出して、みんなを驚かせてみてよ」と、あえて本人の強みが一番活きる仕事を任せるようにしています。 チーム力という形にこだわっているわけではないのですが、結果的に一人ひとりがプロとして自走できる、そんな組織になっていますね。
登壇者の皆さんは交流会にも参加
安松(tokumo):最後に、会場の皆さんにメッセージをお願いします。
栗林(Ri-speKt):今日は会計ファームについてお話ししましたが、私は自分が楽しめる環境で、仲間も楽しめるという環境を重要視して、組織づくりや営業もしています。
皆さんも、キャリアに悩まれることは多いと思いますし、私も悩んだ時期がありました。ですが私は、「好きという熱量」こそが、活動の最大の根源になると思いますので、皆さんもぜひ自分の好きを仕事にしていくことを、選択肢に入れてほしいと思っています。
世戸口(はてなベース):いろんな会計士のキャリアをみても、自分で事業をやったり、自分で新たな会社を立ち上げたりするというケースは決して多くはありません。でもビジネスサイドへ来てみると、リスクはあるものの、それと引き換えに得るものもたくさんあります。
僕は26歳という若さで独立したことで、経験のなさから顧客と上手くいかなかったり、スキル面で足りなくて競争に負けたりすることだってありました。でも、仕事は自分の責任でできるというのは、得難い経験だったと感じています。
多方面で独立する方が増えたら業界はもっと面白くなると思うので、何かしら今日の参考になっていれば嬉しいです。
安松(tokumo):本日は栗林さんと世戸口さんに「これからの独立・会計ファーム作り」を聞いてきました。ありがとうございました。

【参加受付中!】第17回 公認会計士ナビonLive!! 開催!
第17回 公認会計士ナビonLive!!の開催が決定!
「プロフェッショナルとしての立ち位置」をテーマに、「独立×社外CFO」「CFO・コーポレート責任者」「投資家・株主(ベンチャーキャピタル)」「コーポレートガバナンス系役員」といった分野にフォーカスをして公認会計士の方々にお話を伺い、みなさんとの交流の機会をお届けする予定です。みなさまのご参加お待ちしております!
執筆:雨見 隠

























