第11回:新型コロナウイルス感染症流行と事務所のリスク(続編)【会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイント】



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みなさん、こんにちは。東京共同会計事務所の窪澤と申します。
今回は、会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイントの第11回として、「新型コロナウイルス感染症流行と事務所のリスク(続編)」についてお話しさせていただきます。

これまでの記事はこちら →シリーズ:会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイント

著者

東京共同会計事務所
税理士/マネージャー
窪澤 朋子

上智大学外国語学部卒業
平成15年税理士登録。前職の鳥飼総合法律事務所で、14年にわたり、税務訴訟及び税賠訴訟の補佐人・不服申立の代理人を務める。主な担当事件に、ストック・オプション事件、ガーンジー島事件、グラクソ事件、外国籍孫事件等。
税賠案件では、税賠訴訟の他、税理士紛議調停・訴訟前の交渉等、多数の案件に関与。税賠保険事故調査書のレビュー経験あり。
著書に、「税理士の専門家責任とトラブル未然防止策」(清文社・分担執筆)等。

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テレワークと職員間のコミュニケーション

前回は、主に新型コロナウイルス感染症流行に伴い変化したクライアントとのコミュニケーションに関する留意点についてお話ししましたが、今回は、withコロナ時代における、事務所内での留意点についてお話しいたします。
みなさんの事務所の中には、このたびの新型コロナウイルス感染症の流行を機にテレワークが浸透した事務所や、緊急事態宣言の解除に伴い従来型の勤務体制にほぼ戻った事務所など、様々な事務所があるかと思われます。しかしながら、この冬に発生が危惧される、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザとの同時流行に備えるためにも、いつ出社できない状態となっても問題がないような対応を取っておくことが検討課題となっている事務所も多いのではないかと思います。
テレワークのメリットやデメリットについては、会計事務所に限らず、論点として挙げられるところですが、やはりよく問題とされるのは、「社内のコミュニケーション不足」のようです。ある一定の情報を伝達することが目的であれば、Web会議でも十分代用できると思われますが、ブレーンストーミングのように、アイディアを出し合うことが目的の会議においては、Web経由では活発な発言が出にくいことが指摘されているようです。
また、ルーティンの作業をこなす場合は、仕事の効率にさほど変化がないかもしれませんが、クライアントへの提案書の作成業務等においては、職員同士が雑談や相談等を行いにくいことによるデメリットが、少なからずあるものと考えます。また、一定の作業をテレワークにて1人でこなしていると、事務所で作業をするのとは異なり、孤独感を感じる場合も多いでしょう。出社している時となるべく同程度の環境が保てるよう、コミュニケーションのためのWebツールなどを活用するのも一つの手かもしれません。
なお、ペーパーレス化を進めるために証憑類をPDF化する作業には、紙ベースの証憑類をスキャナに取り込んでデータ化するという工程が必須となりますが、在宅勤務の方が大勢いる中、閑散とした事務所で当該作業を行う立場の方々にとっては、モチベーションの維持も重要になるものと思われます。

申告書作成やレビューにおける体制の整備

申告書の作成については、作業ファイルを作成し、参照すべき書類を紙ベースでファイリングしたものをレビュアーに回付し、当該ファイルをレビュアーがチェックする、というのが従来のフローであったと思われます。
ところが、紙ベースの請求書の写しに手書きでコメントを書き込んでファイリングするという手法は、テレワークでは行えません。申告のための元データも、申告書自体も、電子データ上で作成し、保存する必要があると思います。
レビュアーの作業も、作業ファイル上ではなく、自宅のPCのモニターで行われることに鑑み、作成担当者による手書きのコメントやチェックマークはPDF上でのコメントの入力等に代えるなどの対応を行うとともに、申告書の数字の元となったエクセルシートや原始証憑を参照しやすくするなどの工夫も必要となるかと思われます。
税務雑誌等文献の確認や参照も、事務所へ出勤している時よりも行いにくくなるものと思われます。アクセスしたい情報につき、Web上で検索を行うことも可能ではありますが、探したい情報になかなかたどり着かないケースや、真偽不明の情報に惑わされる可能性なども想定されます。このような事情から、申告書の作成については、普段よりも時間がかかることを想定して早めに着手することが望まれます。
クライアントのサポート業務等で多忙と思われる中、新しいフローの構築に着手することはなかなか難しいかもしれませんが、IT化、デジタル化、ペーパーレス化はwithコロナの時期に限らず、現世代を生きる私たちに共通した課題でもあります。これを機に、今まで手作業で行っていた業務をほぼデジタル化することができれば、事務用品や倉庫代等のコストの削減及び業務の効率化にもつながるものと思われます。
待ったなしの課題に取り組むことで、テレワークにもデジタル化にも対応した、新しい申告書作成のルールを整備することが望まれます。

「コロナ前」と同等の品質管理レベルの達成

各担当者がテレワークにより申告書作成を進めると、「コロナ前」よりも作業におけるミスの発生度合いは高まりがちであると思われます。
慣れないテレワークにおいて、自宅のノートPCの小さな画面上で、会計ソフト、申告書作成ソフト、エクセルシート等の複数のウィンドウを交互に開きながら数字の転記をしていると、正しい結論が導けたかどうか、不安になることもあるのではないでしょうか。また、集計した数値が正しいかどうかのチェックも、プリントアウトして紙ベースで行いにくいため、確信が持てない場合も多いと思われます。
更に、事務所内の対面打合せが減少することで、ある論点に全く気付かないまま申告書の作成を進めてしまい、レビュアーも当該論点に気付かず申告書を提出してしまった、という事態も起こり得るのではないかと思われます。申告書作成前の段階から、作成⇒レビュー⇒提出までのフローにおいて、テレワークを起因としたミスを減らすことが最も重要と考えます。
次の繁忙期の際に、現在の出社率を維持できない可能性は相当程度高いと思われます。職員全員のテレワークが余儀なくされてもミスのない申告書を仕上げられるよう、準備を整えておきましょう。

【今回のポイント】

  • テレワーク中でも職員間のコミュニケーション不足を改善する手段を確立する
  • テレワークを前提とした申告書作成作業フローを準備しておく

次回に続く

第12回はこちら

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記事引用元:【第11回】新型コロナウイルス感染症流行と事務所のリスク(続編):会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイント | 東京共同会計事務所求人・採用サイト



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