四大監査法人を比較する:規模・業績編【2016年4月版】



【追記】
最新版の監査法人比較記事は下記になります。下記ページをご参考ください。

BIG4監査法人を比較!2023年12月版_四大監査法人の決算・業績(売上・利益)、クライアント数、人員数ランキング!

BIG4監査法人・四大監査法人

『BIG4監査法人』『四大監査法人』と呼ばれる大手監査法人ですが、そこにはどれくらいの差があるのでしょうか?

今回、四大監査法人(あずさ・新日本・トーマツ・PwCあらた)「規模(人員数)」「クライアント数」「業績」の3点から比較してみました。

今回比較に使った数字は、

  • あずさ、新日本、トーマツに関しては「業務及び財産の状況に関する説明書」
  • あらたに関しては「監査品質に関する報告書」ならびに法人のWEBサイトの情報

を参考に検証しています。(そのため、PwCあらた監査法人のデータが一部少なくなっています点はご了承ください)

なお、PwCあらた監査法人(以下、あらた監査法人)は2016年7月から有限責任化を予定しており、今後は「業務及び財産の状況に関する説明書」が開示されていくと思われますので、次回以降はそちらを参考に分析していく予定です。

今回参考にした資料はこちら。

四大監査法人を『人員』で比較する

四大監査法人の人員数

それでは、まずは四大監査法人を『人員』から比較してみましょう。

ここでは、人員総数、パートナー数、公認会計士数などで比較しました。

  あずさ 新日本 トーマツ あらた
人員総数 約5,400名   6,284名 6,185名  2,219名 
パートナー数  604名  640名 588名  113名 
パートナー比率 11.2%  10.2%  9.5%  5.1% 
公認会計士数  3,004名  3,386名  3,077名 767名 
公認会計士比率 55.6%  53.9%  49.7%  34.6% 
会計士試験合格者等 1,205名 1,173名 1,284名 419名
試験合格者等比率 22.3% 18.7% 20.8% 18.9%
公認会計士ならびに合格者等の総数 4,209名 4,559名 4,361名 1,186名
公認会計士ならびに合格者等比率 77.9% 72.6% 70.5% 53.5%
決算日 2015年6月 2015年6月 2015年9月 2015年6月

※あずさ監査法人のみ「業務及び財産の状況に関する説明書」に正確な人員総数の記載がなく、約5,400名との記載あり。ただし、同法人のWEBサイトによると2015年12月末時点で5,403名とのことであるため5,400名で以降の計算を行っています。

総人員数

【あずさの人員数は新日本・トーマツより1割程度少ない。あらたは他法人の約3分の1】

総人員数に関しては、新日本とトーマツが約6,200名と多く、あずさは約5,400名とそれよりも1割強少なくなっています。また、あらた監査法人は2,219名と他3法人の約3分の1となっています。

●総人員数

  • 1位:6,284名(新日本)
  • 2位:6,185名(トーマツ)
  • 3位:約5,400名(あずさ)
  • 4位:2,219名(あらた)

パートナー数・比率

【三法人ともパートナーは600名前後、あらたは人数、比率ともに低め】

パートナー(社員・代表社員)数に関しては、あずさ、新日本、トーマツの三法人はいずれも600名前後ですが、人員の総数にパートナーが占める比率は、あずさの11.2%とトーマツの9.5%で2%近い差があります。

一方であらた監査法人のパートナー数は113名と他法人の5~6分の1となっており、人員総数に占めるパートナー比率も5.1%と他三法人の約半分となっています。

パートナー数をどう捉えるかにもよりますが、若手会計士にとっての昇格可能性やパートナーへの昇格のしやすさを考えるのであれば、パートナー比率が低い法人のほうが昇格はしやすいかもしれません。

●パートナー数 

  • 1位:640名(新日本)
  • 2位:604名(あずさ)
  • 3位:588名(トーマツ)
  • 4位:113名(あらた)

公認会計士、会計士試験合格者等の人数・比率

【会計士・合格者数は新日本が最多、比率はあずさが最多】

公認会計士と試験合格者の総数に関しては、新日本が最も多く4,559名の公認会計士を有しており、トーマツ、あずさより200~300名ほど多くなっています。

会計士比率に関しては、あずさが最も高い77.9%となっており、あらたは53.5%と他三法人と比較すると非常に小さくなっています。

これに関しては、監査の比率が影響を与えている可能性はあり、(後述しますが)あずさは四大法人の中で監査報酬の比率が最も高く、あらたは最も低くなっているため、それを反映しているとも考えられます。

●公認会計士・試験合格者等の数

  • 1位:4,559名(新日本)
  • 2位:4,361名(トーマツ)
  • 3位:4,209名(あずさ)
  • 4位:1,186名(あらた)

四大監査法人を『クライアント数』で比較する

四大監査法人のクライアント概要

次に、四大監査法人をクライアント数から比較してみましょう。

ここでは監査証明と非監査証明のクライアント数や比率を比較しています。

  あずさ 新日本 トーマツ あらた
監査証明クライアント総数 3,325社 4,084社 3,574社 931社
金商法・会社法 737社 1030社 959社 ***
金商法 51社 61社 12社 ***
会社法 1,316社 1,441社 1,100社 ***
金商法クライアント比率※1 23.7% 26.7% 27.2% ***
非監査証明クライアント数 2,073社 3,583社 3,526社 1,041
非監査証明クライアント比率※2 38.4% 46.7% 49.7% 52.8%

※1:{(金商法・会社法)+金商法}クライアント数/監査証明クライアント総数で計算。
※2:非監査証明クライアント数/(監査証明クライアント総数+非監査証明クライアント数)で計算。

監査証明・非監査証明クライアント総数

【監査クライアント数は新日本が最多、あらたは高い非監査クライアント比率】

監査証明クライアントに関しては、新日本が4,084社と最も多くなっています。新日本に関しては東芝事件の影響でクライアントの減少が予想されますが、2位のトーマツと約500社の差がありますので、2016年4月現在の監査人の変更情報などを見る限りではその順位が逆転する可能性はそれほど高くないかもしれません。

また、非監査クライアント数に関しても、3,583社と新日本が最多となっていますが、非監査クライアントの比率で見るとあらたが52.8%と最も高く、あずさが38.4%と最も低くなっています。

●監査クライアント数

  • 1位:4,084社(新日本)
  • 2位:3,574社(トーマツ)
  • 3位:3,325社(あずさ)
  • 4位:931社(あらた)

●非監査クライアント数

  • 1位:3,583社(新日本)
  • 2位:3,526社(トーマツ)
  • 3位:2,073社(あずさ)
  • 4位:1,041社(あらた)

四大監査法人を『業務収入・利益』で比較する

四大監査法人の業務報酬・当期純利益

それでは、最後に業務収入や利益を比較してみましょう。

業務収入(売上高)

  あずさ 新日本 トーマツ あらた
業務収入 83,157百万円 99,175百万円 89,177百万円 33,310百万円
監査証明収入 68,101百万円 77,597百万円 66,658百万円 16,683百万円
監査収入比率 81.9% 78.2% 74.8% 50.1%
非監査証明収入 15,056百万円 21,578百万円 22,519百万円 16,626百万円
非監査収入比率 18.1% 21.8% 25.3% 49.9%

【業務収入トップは新日本、東芝移籍後は順位変動があるか!?】

四大監査法人の業務収入を見てみると、新日本が約991億円でトップとなっています。そこにトーマツが約891億円、あずさが831億円、あらたが333億円と続きます。

1位の新日本と2位のトーマツでは100億円の差がありますが、2016年以降は東芝の監査(報酬10億円程度)のあらたへの移行、また、行政処分の影響などで上位三法人の順位が入れ替わるのか、また、あらたと他三法人の差がどこまで縮まるのかに注目です。

●業務収入

  • 1位:991億円(新日本)
  • 2位:891億円(トーマツ)
  • 3位:831億円(あずさ)
  • 4位:333億円(あらた)

【非監査業務の収入トップはトーマツ、非監査の収入比率が高いのはあらた、あらたは非監査の収入額であずさを上回る】

監査と非監査それぞれの業務収入に目を向けてみると、監査は新日本がトップ非監査ではトーマツがトップとなっています。

また、非監査業務に関しては、あらたは非監査業務収入の比率が約50%と、18~25%程度の他法人を大きく上回り四大法人の中でも最も高くなっていますが、収入額でもあずさを上回っているのは特筆すべき点でしょう。

●監査証明収入

  • 1位:77,597百万円(新日本)
  • 2位:68,101百万円(あずさ)
  • 3位:66,658百万円(トーマツ)
  • 4位:16,683百万円(あらた)

●非監査証明収入

  • 1位:22,519百万円(トーマツ)
  • 2位:21,578百万円(新日本)
  • 3位:16,626百万円(あらた)
  • 4位:15,056百万円(あずさ)

構成員・パートナーひとりあたり業務収入(売上高)・利益

最後に構成員・パートナーひとりあたりの業務収入や利益について見てみます。

あずさ 新日本 トーマツ あらた
業務収入
83,157百万円 99,175百万円 89,177百万円 33,310百万円
構成員ひとりあたり業務収入
15,399,444円 15,782,145円 14,418,270円 15,011,266円
パートナーひとりあたり業務収入
137,677,152円 154,960,937円 151,661, 565円 294,778,761円 
経常利益
1,594百万円 1,096百万円 1,954百万円 3,976百万円
構成員ひとりあたり経常利益
295,185円 174,411円 315,926円 1,791,798円
パートナーひとりあたり経常利益
2,639,072円 1,712,500円 3,323,129円 35,185,840円 
経常利益率
1.9% 1.1% 2.2% 11.9%
当期純利益
2,252百万円 800百万円 1,608百万円 ***
構成員ひとりあたり当期純利益
417,037円 127,307円 259,984円 ***
  パートナーひとりあたり当期純利益
3,728,476円 1,250,000円 2,734,694円 ***
純利益率
2.71% 0.81% 1.80% ***

【BIG4間でのひとりあたり業務収入の差は137万円、あらたのパートナーは他三法人の倍稼いでいる!?】

あずさ 新日本 トーマツ あらた
業務収入
83,157百万円 99,175百万円 89,177百万円 33,310百万円
構成員ひとりあたり業務収入
15,399,444円 15,782,145円 14,418,270円 15,011,266円
パートナーひとりあたり業務収入
137,677,152円 154,960,937円 151,661, 565円 294,778,761円 

前述のとおり法人間の業務収入(売上)には四大法人間でも大きな差がありましたが、ひとりあたりで見てみると、トップの新日本の1,578万円と最も低いトーマツの1,441万円では137万円の差があるということで、同じBIG4監査法人といっても1位と4位ではひとりあたりの売上に約1割の差があることがわかります。

●構成員ひとりあたり業務収入

  • 1位:1,578万円(新日本)
  • 2位:1,539万円(あずさ)
  • 3位:1,501万円(あらた)
  • 4位:1,441万円(トーマツ)

また、パートナーひとりあたりの業務収入を計算してみると、あらたの金額が他法人の2倍近く、あずさは新日本、トーマツより1割ほど低くなっています。

これに関しては、

  • あらたはパートナーが少ないためひとりあたりの金額が大きくなっている
  • 非監査業務が多いのであらたの収益性が高い(監査より非監査の方が収益性が良い!?)

などいくつかの要因が予想できますが、今後、機会があれば経年での分析などを行い深掘りしてみようと思います。

●パートナーひとりあたり業務収入

  • 1位:2億9,477万円(あらた) …パートナー113名
  • 2位:1億5,496万円(新日本) …パートナー640名
  • 3位:1億5,166万円(トーマツ) …パートナー588名
  • 4位:1億3,767万円(あずさ) …パートナー604名

【圧倒的に高いあらた監査法人の経常利益率、その理由は…】

あずさ 新日本 トーマツ あらた
経常利益
1,594百万円 1,096百万円 1,954百万円 3,976百万円
構成員ひとりあたり経常利益
295,185円 174,411円 315,926円 1,791,798円
パートナーひとりあたり経常利益
2,639,072円 1,712,500円 3,323,129円 35,185,840円 
経常利益率
1.9% 1.1% 2.2% 11.9% 

経常利益を見てみると、金額、利益ともにあらた監査法人が最も大きくなっています。

あらた監査法人に関しては詳細な決算書(業務及び財産の状況に関する説明書)が公開されていないため、他三法人より経常利益が大きい理由はわかりませんが、他三法人は経常利益率が1~2%程度と横並びとなっているため、構成員への業績連動賞与などによって利益が調整され1~2%の経常利益に着地させている、あらた監査法人はその調整を行わず内部留保としているという可能性もあるかもしれません。

●経常利益

  • 1位:39億円(あらた)
  • 2位:19億円(トーマツ)
  • 3位:15億円(あずさ)
  • 4位:10億円(新日本)

●経常利益率

  • 1位:11.9%(あらた)
  • 2位: 2.2%(トーマツ)
  • 3位: 1.9%(あずさ)
  • 4位: 1.1%(新日本)

最後に、構成員、ならびに、パートナーひとりあたりの経常利益です。これに関してはあまり高い金額ではないですが、前述の通り、1~2%となるよう調整が行われた経常利益である可能性もあるため参考程度としておくほうが良いかもしれません。

●構成員ひとりあたり経常利益

  • 1位:179万円(あらた)
  • 2位: 31万円(トーマツ)
  • 3位: 29万円(あずさ)
  • 4位: 17万円(新日本)

●パートナーひとりあたり経常利益

  • 1位:3,518万円(あらた)
  • 2位: 332万円(トーマツ)
  • 3位: 263万円(あずさ)
  • 4位: 171万円(新日本)

 

以上、2015年度(平成27年度)の情報にもとづく四大監査法人の比較をお送りしました。

2016年以降は、7月から有限責任化するあらた監査法人の動向、また、東芝問題が新日本監査法人に与える影響などによって四大監査法人や監査法人業界の勢力図に変化が出てくると思われます。

次回以降の特集にもご期待ください。

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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