このコーナーでは、“くわえもん”こと高桑昌也氏が、厳しく、優しく、ユーモラスに公認会計士のみなさんのお悩みに答えます!
さあ、みんなくわえもんに相談してみよう!
くわえもんとは?
高桑昌也 通称“くわえもん”
公認会計士・税理士
株式会社エスネットワークス
プリンシパル
麻布高等学校・慶應義塾大学卒。大学在学中の2000年に公認会計士2次試験に合格。中央青山監査法人、金融庁への出向、都市銀行でのデリバティブ業務を経て現職。さそり座O型。秋田県男鹿半島出身。
趣味:写真、旅行、夜の麻布・六本木
【参考サイト】
今回のお悩み:カネなし、コネなし会計士が東京で独立したい!どうすれば良い!?
今回の相談者
ESさん、31歳、男性
公認会計士
※写真はイメージです。
相談内容
くわえもんさん、はじめまして!
私は事業会社勤務の公認会計士で、現在31歳の男性です。現職では決算~開示までを一通りと、IFRS導入の業務などをしています。
実はこのたび、独立をしようと思っています。
今日の相談は、その独立に関するものなんです。
現職は給与、仕事内容、人間関係すべてにおいてそれなりに満足で、大きな問題はありません。
しかし、どうしてもやりたい仕事(行きたい業界)ができてしまいました。
その業界はまだ環境面で未整備なところがあるものの、すごく勢いがあって、多くの若者が集まり盛り上がっている業界です。私はプライベートでその業界に明るく、自分のスキルを活かしてその業界の発展に一役買えたらと強く思うようになりました。
業務内容は、月並みですがその業界で働く人の税務サポートや、進出しようとしているスタートアップ企業のサポートなんかをできたらと思っています。今はもっと具体的なところまで落とし込めないか、頭をひねっている最中です。
転職でなく独立したい理由は、自由な発想で自分の裁量をもって業界を発展させたいからです。
今、私は燃えに燃えています!
ただし、不安もあるのです。
(1)その業界は発展途上で、関わろうと思うと東京へ出ないといけません。
(2)カネなし、コネなし。カネには目をつぶるとして、問題はコネ。東京には一切人脈がありません。(東京よりはマシですが、地元にもそんなにありません。)独立会計士は、最初は、先輩会計士などから人脈で仕事を得ているイメージがあります。身ひとつで知らない土地に飛び込んで大丈夫なのか。
(3)私は企業の決算書や開示資料の作成にはそれなりに自信がありますが、今やろうとしていることはどちらかというと戦略コンサル寄りで、それらとはほとんど関係がありません。必要な知識はやりながら勉強するつもりでいますが、甘いのではないか。まずはコンサル会社などで経験を積むべきではないのか。
(4)最初は、企業の開示書類作成などをサポートして食いつなぎつつ、「その業界」に関わる仕事を少しずつ見つけていきたいと思っていますが、これまた、甘いのではないか。
総じて出たとこ勝負感が強く、裸一貫で東京へ飛び出すようなイメージで、今の安定とは対極の環境に身を置くことになります。その恐怖が、私の心に点いた火に冷水をぶっかけてくるのです。
以前、私はとある先輩会計士に「会計士としての目指すべき姿、ビジョンが見えない」と指摘されたことがあります。そんな私が、ようやく見つけた「ビジョン」である気がしているのです。なのでどうしてもやってみたい。でも怖い…うお~どうすればいいんだ!! という感じで、迷路をさまよっています。
くわえもんさん、お願いします。
私の不安をぶった切って、後押ししてくださ~い!!!
くわえもんからの回答
どうもこんにちは。今日は中華人民共和国の「深セン(Shenzen)」という都市に、視察に来ています。
現地であれこれ話を聞いてみたり、実際見てみると、深センは以下のような都市と言えます。
- 経済都市
中国が国家を挙げて一流の経済都市にしようとしている。
現在はテンセント、ファーウェイ、DJIなど中国を代表する企業の集積地となっている。国立のベンチャー企業のインキュベーション施設があり、国がベンチャー企業のファイナンスや経営の面倒も見ている模様。ベンチャーキャピタルも数多くある。インフラのIT化が進んでおり、街の中ではあまり現金を使わない。「We Chat Pay」(日本でいえばLINE PAYみたいなもの)でおおむね支払いができる。 - 地理
香港のすぐ隣。電車で数十分。香港人は物価の安い深センに買い物に来るらしい。一方深センから香港への渡航は、週に1回に制限されているらしい。 - 人口
1,300万人と発表されているが、実際は2,000~2,500万人くらいいる模様。 - 不動産
価格が高騰していて、高級マンションでは100平米で2億円する物件もある。2億円の物件の家賃は月額20万円くらいであり、不動産の投資利回りは日本とくらべて悪そう。 - 高層ビル
地震がないためか、ビルの高層化も進んでいる。500mくらいの高さのビルがあった。 - 言語
街の中では英語はほぼ通じない。当然日本語も通じない。 - 日系企業
全般的に労働者の給与もあがっていて、月給10万から20万円程度が平均の様子。日本のメーカーは高い人件費のため、軒並み撤退してしまったとのこと。 - 交通
渋滞は比較的少ないが、香港と深セン間は混む模様。全般的に運転は荒い。 - 飲み屋
コンプライアンスが重視されているようで、客引きの類がいない。健全なナイトライフ。
こんな感じです。
「百聞は一見にしかず」と言いますが、やはり現地に来ないと、実感が沸かないものです。もしESさんが深センに来ることがあったら、ご参考にされてください。
さてESさんからのご相談ですが、独立をお考えですが、色々心配ごとがあるとのこと。
心配ごとは大きく2つに整理できると理解しました。
その1:東京へ出ないといけない。カネもないし、東京にはコネがない。
その2:やろうとしているのはコンサル寄りだが、コンサル未経験である。
その1に関しては、迷っていても仕方がないので、とりあえず東京に出てくる日付を決めましょう。
資金は家賃とか生活費で、200~300万円は確保しておきたいですね。もし当面の生活に不安があるのなら、住民票を移したあとに、「日本政策金融公庫」に相談に行ってください。
【日本政策金融公庫】https://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/goriyou.html
「創業する際の融資を受けたいのですが」とお話してみてください。親身に相談に乗ってくれます。過去に事故さえなければ、500万円くらいの運転資金は貸してくれるでしょう。
資金を確保し安心した後は、コネクション構築に動きましょう。東京に人脈が一切ないとのことですが、会計士の同期や、学校の同級生で東京に出てきている人はいませんか。また、ご両親の関係で、東京でお仕事をしている人はいませんか。まったくのゼロでなく、何がしかいらっしゃるとは思いますので、まずはその関係を辿っていってください。
そのようなツテも全然ない、ということでしたら、コンサル会社や監査法人にアポなしで回り、「私会計士の有資格者なんですが、何か業務委託のお仕事ないですか」とお尋ねする、というのはどうでしょうか。
特にいまコンサル会社はかなりの人手不足です。会計士有資格者の確保にも四苦八苦しているので、逆にありがたがられるのではないでしょうか。ラッキーなことにお仕事をいただければ、そのコンサル会社のテクニックをご自身の「肉体化」してください。
その2に関しては、ぶっちゃけ未経験でも、やっているうちに何とかなります。意外に参入障壁が低いのがコンサル業界です。
ただ最初はどうしても不安でしょう。上京されましたら、東京駅近くの「丸善」か「八重洲ブックセンター」に行って、書籍を各分野で3冊から5冊お買い求めください。
- M&A、企業再編税務
- デューデリジェンス、バリュエーション
- 企業再生
- IPO、資本政策
- 事業戦略、事業計画立案、マーケティング
先人は自分のノウハウを書籍化してくれています。ありがたいことに多少のお金を払えば、それを読書という形で吸収できます。最低限の知識、あと体力があれば、独立しても何とかなるでしょう。
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