みなさんこんにちは、公認会計士ナビ編集部です。
引き続き青山綜合会計事務所さんからお届け致します。
前回の記事では、証券化専門の会計事務所のサービスやそこでの仕事内容についてお伺いしましたが、今回は、実際に監査法人から転職された会計士の方に、証券化の仕事を選んだ理由やそこに感じている魅力をお伺いしたいと思います。
前回の記事はこちら
→会計士のポテンシャルを最大限に発揮できる!?証券化のキャリアや仕事について聞いてきた!
お話を伺ったのは、PwCあらた監査法人出身で、2017年から青山綜合会計事務所に勤務している大野さんです。
大野 沙希子/公認会計士試験合格
青山綜合会計事務所
ファイナンシャルビジネスサービスグループ
Aグループ スタッフ
2012年11月、大学在学中に公認会計士試験に合格。あらた監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)に入所。自動車業と小売業の会計監査、および内部統制監査を約2年半経験。一部インチャージ業務も代行し、クライアントとのスケジュール調整やチームの進捗管理も担当。相手のニーズや要望をくみ取り、監査以上にクライアントに近い立場で貢献したいと考え、大手PR会社に入社。約1年半、各社へのPR案提出や、PR施策実施後の効果測定等を経験。
公認会計士資格を活かし、新たな分野にチャレンジしたいと思い、2017年7月、青山綜合会計事務所へ入社。アソシエイト職としてSPC管理業務に従事し、入社後、約1年でスタッフ職へ昇格。現在に至る。
※所属・役職等は記事公開時のものです。
-大野さんは、監査法人からPR会社へ転職し、現在は会計事務所で証券化専門の仕事をされているというとてもめずらしい経歴ですね。そもそも監査法人からPR会社に行かれたのはどういったご理由からなのですか?
当時は、監査法人ではないところで働きたいと思っていたのが理由です。監査は好きでしたがクライアントから独立した第三者の立場で接しなければならなかったので、クライアントに近い立場で寄り添えるような仕事をしたいと思っていたときに、PRの仕事と出会いました。
‐クライアントに近い立場というと、コンサルティングや事業会社の経理職という選択肢もあったと思うのですが、なぜPR会社だったのですか??
会計は好きだし、監査も楽しかったのですが、監査法人で働いている時に「もしかすると私は世間知らずなのかもしれない…」という気持ちがずっとあったんです。
大学在学中に会計士試験に受かってBIG4という大手監査法人に入り、何も知らないうちから先生と呼ばれて、1年目からアシスタントがついて郵送など庶務的なことはすべてやってもらっていました。一般の人が普通の会社に入って社会人1年目で経験するようなことはできないままで、「私は社会人としてこのままで大丈夫なの?」という不安がありました。
監査を通じて会社の裏側を見たり専門性を高めたりできるのは良かったですし、大手監査法人にいれば監査プロセスもしっかりしているし、監査法人という看板で評価もされますが、やめてしまって監査システムが使えなくなったら、自分は監査すらできないかもしれないという気持ちもありました。
また、ある時、クライアントの方が「監査しか経験していない会計士だと、経理の現場では即戦力にはならない」という話をしているのを耳にして、自分のことだと感じてしまったこともあり、監査法人の外に出てどこにいっても通用する人間になりたいと思いました。
‐PR会社ではどのような仕事をされていたのですか?
クライアントが行ったキャンペーンなどPR施策についての反応をSNSのビックデータから抽出して分析する仕事を行っていました。数字の意味を考えて分析するのは好きなので、数字を見てどのようなPR効果があったのか分析するのは楽しかったです。
ところが入社して数年経ち次の役職へのステップが見えてきて、このままPRの道を進むべきか、税務や会計が好きなので転職をすべきか、キャリアに対する悩みが出てきました。
それで、会計や税務の専門的な知識を持ちつつ、社会人として求められるスキルを全般的に身に付けられそうなところに転職したいと思い、友人から青山綜合会計事務所を紹介してもらいました。
‐会計税務の仕事と言っても選択肢はたくさんあったと思うのですが、証券化分野に興味を持った理由は何ですか?
専門的な仕事を探していたのですが、証券化の仕事は、ビークルの設立から、期中の管理、清算まですべてが見られますし、複数のビークルを担当するので、なかなか経験できないことを頻繁に経験できる点に魅力を感じました。
また、専門性が身につくことに加えて、アソシエイトのうちは担当するビークルの捺印・支払いなども行えるので、私が若いうちに経験しておきたいと思っていた社会としての基礎になる庶務業務も同時に経験できるというのも魅力のひとつでした。
青山綜合会計事務所は証券化という専門分野をけん引してきた事務所で組織もしっかりしていますので、社会人としての土台になる部分から証券化の専門性までキャリアをしっかり作れる環境があると感じ、ここで働きたいと思いました。
‐青山綜合会計事務所に入所してみて、当初のイメージと違いはありましたか?
面接の際に、「最初は経験したことがないことばかりだけど、数を経験できるのでそのうち普通にできるようになりますよ」と言われ、早く自分もその域に達したいという意気込みで入所しました。
入ってみたら面接で感じたイメージ通りで、ビークルの設立と清算が日常的に起こり、1年間で設立を5件、清算を2件行うことができました。ほとんどの人が経験しないことを何回もできて勉強になっています。
‐業務内容について教えていただけますか?
アソシエイトのときは、アセットマネージャーから来た指図の稟議書の作成や、捺印、支払、月次決算の入力などを担当していました。
今はスタッフになり、アセットマネージャーからの質問に対応したり、税務に関する相談を受けたりしています。またアソシエイトが行った捺印、支払の内容を確認したり、月次の会計処理をレビューしたりしています。
‐証券化の業務をする上で、監査法人での経験が役立ったことはありますか?
監査調書を作るスキルは、レビューをしたり資料を作成したりするのに役立っています。
監査法人の先輩から、監査調書は、「何をしているのか」「どうしてそれをしているのか」「なぜその答えに至ったのか」が、ある程度の知識がある人なら誰が見ても理解できるように作るものだと教わりました。
報告書や資料を作成するときも、後から見たときブラックボックスになってしまう箇所がないように、分かりやすく作るように心がけています。
またSPCにおいても監査対応の業務があるのですが、監査に必要なものを事前に準備することで、監査がスムーズに進行するようになりました。
監査法人では入社1年目でもプロフェッショナルとして振る舞うことが求められるので、分からない時にどうやって振る舞うべきかという対処法も鍛えられたのが、役立っています。
‐SPCだと連結対象になるケースもあるかと思いますが、会計も役に立っていますか?
監査法人にいたとき複数の会社の連結パッケージをチェックしていたので、初めてみる会社の連結パッケージでも、ここだけは逃してはいけないというチェックの勘所みたいなものが出来ていて、とても役立っています。
‐逆に、初めて経験したことはありますか?
決算書という成果物については知っていましたが、もとになる仕訳はしたことがありませんでした。アソシエイトのとき仕訳はこうやって作るのだという実務を知り、決算書が出来上がっていく過程を実感しました。
やはり実際に経験してみると、決算書をチェックする立場と作る立場の違いを実感しています。監査では何をチェックするのか論点が決まっていたので楽でしたが、経理の側になると会計とは関係のない有象無象の事象の中から論点を見つけ出して、対応する書類を探して仕訳をしなければなりません。
しかも試験問題のように明らかに分かるような論点ばかりではなく、自分の知識を総動員して見つけ出すという感覚がなかなか慣れませんでした。
‐ほかにも、監査法人との違いに戸惑ったことはありますか?
監査法人で接する人は、同僚は公認会計士が中心で、クライアントの担当の方も上場企業での経理経験をお持ちであったり、会計知識や会計への関心を持っておられたりと、会計についての見識のある人ばかりでした。
ところが今は、同僚には税理士や税理士を受験中の方など会計ではなく税務を専門とされている方もいますし、クライアントにはアセットマネージャーやファンドマネージャーなど金融系の方がおられるなど、全員が同じように会計知識や会計への興味関心を持っているわけではありません。
そのため、会計が専門ではないお客様に会計に関する質問を受けたときに、分かりやすく伝えることができず、最初は戸惑ったこともあります。
また、ある時、会計データについてクライアントからメールで指摘を頂いたのですが、先輩から「先方は間違っていると言いたいのではなく、純粋に疑問に思って聞いているだけだよ」と言われて、指摘ではなくただの質問だとハッとしたことがありました。
監査をしていたときは自分の意見や作業が正しいかどうかばかり考えていて、質問されるとつい「間違いを指摘された!」と思っていましたが、そうではないのだということに気付かされました。
‐SPCに関する知識や法律を含めてこういう知識が足りなくて勉強したというのはありますか?
特定目的会社の担当が多かったのですが資産流動化法についてまったく知らなかったので、ひとつひとつ勉強しました。
また、税務についても知識不足を感じました。監査の場合、税務を担当するのは年次が上がってからなので、修了試験を受けるくらいの年次まででは税務を担当したことがない人が多いと思います。税務は記帳もそうですが、申告時期や登記のスケジュールなど1年での流れがありますが、そういったスケジュール感がなくて、把握するのにも時間がかかりました。
‐今後身につけていきたい知識はありますか?
投資スキームに関しては、税務論点が重要であることが多いので、税務知識は高めたいと思っています。
また、不動産証券化についてはいろいろ経験を積ませて頂いているものの、まだ自分が実務で経験したものしか答えられないので、法律の知識も身につけ、あるべき視点からの回答もできるようになりたいと思っています。
‐証券化の仕事の面白さや魅力について教えていただけますか?
会計・税務の専門知識を活かしつつも、会計や税務にとどまらない仕事ができるのが、証券化の魅力です。
投資を本業とされているクライアントの方々は、いかにしてリターンを生み出すかというミッションに向かって、ものすごいスピード感で動いている方ばかりで、刺激を受けます。
今日、明日中と急を要する仕事も多いのですが、臨機応変にスケジュールを調整しつつ対応できるようになり、コミュニケーション能力が高まり、タイムマネジメントの方法も身に付きました。
また、マネージャーから、「税務だけではなく不動産の知識があれば、クライアントからの質問も理解がしやすい」と教えていただき実践しています。
SPCの管理、会計、税務、不動産など、専門知識を掛け合わせて知識が深まっていく感覚や、自分の知識を横断的にフル稼働させる感覚を持てるところが、証券化の仕事の魅力ではないかと思います。
‐監査法人をやめたときにイメージしていた「なりたかった自分」に近づいている感じはありますか?
はい、仕事を通じて成長していっている実感があります。
社会人の常識を身に付けたいと思ったのが監査法人をやめた理由ですが、監査法人では良くも悪くも守ってもらっていたので、そもそも何が足りないのか自覚できていませんでした。今は相手の方のリアクションを見ながら自分に足りないところに気づき、それを変えていくことができます。仕事をしながら鍛えてもらっているという感じです。
監査法人をやめてもうひとつ良かったのが、頭と心がリセットされたことです。監査法人では「監査人として頑張っていこう」とか、「会計士の資格をとったのだからこれを活かしていこう」とか、無意識に自分の道を監査や会計へと狭めていました。外に出てから視野が広がり、自分の能力を生かせる場所は他にもあると感じることができるようになりました。
‐公認会計士ナビをご覧頂いている会計士の方々にメッセージをお願いします。
監査法人では、修了考査や年次が上がるタイミングなど、だいたい3年ごとに次のステップを考える方が多いのではないでしょうか。
その際、会計士という資格に縛られて監査法人の中にだけキャリアを狭めるのはもったいないですし、監査法人の外に目を向ければ未来に対しての道はいくらでもあります。監査法人で頑張れたのならどこに行っても頑張れる下地はできているので、自分がやりたいことやできることを幅広く考えても良い気がします。
青山綜合会計事務所の良いところは、経営陣が立ち止まることなく、常に次に何ができるか本気で考えているところです。いまはまだ会計士の人数は少ないですが、会計士が増えれば会社ができることも増えていくと思うので、青山綜合会計事務所で一緒にチャレンジしてくださる方をお待ちしています。
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