会計士からベンチャーキャピタリストになるには!?若手会計士キャピタリストたちが語ったベンチャーキャピタリストの仕事とキャリア【第3回・公認会計士ナビonLive!!(1)】



来る2015年8月29日(土)に第4回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。本記事では第4回の開催に向けて第3回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。

第3回公認会計士ナビonLive!!

第3回 公認会計士ナビonLive!!では、「公認会計士×ベンチャーキャピタル」をテーマに、ベンチャーキャピタルで活躍する2名の公認会計士、玉木諒氏と御林洋志氏、そして、若手独立系ベンチャーキャピタリストの木下慶彦氏の3名が、ベンチャー投資やスタートアップの世界で会計士が活躍するために必要なことについて語りました。

本記事では、セッションの中で取り上げられたいくつかのトピックスの中から2つのテーマについてお伝えします。 

※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。

【開催日時】 2015年3月21日(土)

【テーマ】 ベンチャーキャピタル・PEファンド×公認会計士

【第1部トークセッション】 公認会計士×ベンチャーキャピタル

  • 若手会計士はどうやってベンチャーキャピタルに転職したのか?
  • 会計監査の経験や公認会計士の知見はベンチャーキャピタルの仕事に活きるのか?

【登壇者】(敬称略)

玉木 諒(株式会社サムライインキュベート finance strategic manager/公認会計士)

2007年、公認会計士試験合格。大手監査法人にて国内・海外の上場企業の監査業務を経たのち、事業再生コンサルティング業務、M&Aアドバイザリー業務などに従事、その後会計事務所で独立を経て、2013年に財務責任者としてサムライインキュベートに参画。80社を超える投資先の財務戦略や資金調達、資本政策立案などCFO業務を担当。京都大学文学部卒。

御林 洋志(グローバル・ブレイン株式会社/インキュベーション事業部 プリンシパル)

2007年、公認会計士試験合格。有限責任監査法人トーマツ、シリコンバレーのベンチャーキャピタルを経て、2013年1月、グローバル・ブレインに参画。 トーマツでは、株式公開支援業務に従事し、シリコンバレーでは、現地での案件発掘及びスタートアップへのコンサルティング業務に従事。

木下慶彦(Skyland Ventures 代表パートナー)

1985年生まれ、早稲田大学理工学部卒業後、インキュベイトファンドなど2社のベンチャーキャピタルを経て、2012年8月の26歳の頃にSkyland Venturesを創業し代表パートナーへ就任。『スタートアップ1000人プロジェクト』という、スタートアップで働く仲間を1000人増やすことにチャレンジしている。

Twitterアカウントは@kinoshitay

若手会計士はどうやってベンチャーキャピタルに転職したのか?

公認会計士がベンチャーキャピタルに転職するにはどうしたら良いのだろうか?3名のキャピタリストがベンチャーキャピタルへの転職・就職について語りました。

ベンチャーキャピタルに入るのに決まったルートはない。機会は自分で作るもの(玉木氏)

私の転職経緯は全然参考にはならないかもしれませんが、そもそもVC業界に入るということに関してそれほど決まったルートはないんだろうと思います。

僕の経歴は、大手のあらた監査法人いうところにいて、修了考査が終わった後に転職して、事業再生のコンサルをやっている会社に行きました。その後、個人で仕事をしていたころスタートアップのお手伝いをすることが多くて、業界でがっつりやろうと思っているところにたまたまサムライインキュベートで募集があったので話を聞きに行ったら採用された、という感じで最初からベンチャーキャピタルの仕事をやりたいという流れで入ったわけではないのです。

なので、紹介会社に行って求人から応募するというケースよりも、自分で機会を作って、まずはノリでも良いのでどこかのベンチャーキャピタルやスタートアップなどに行って接点を作っていくことが重要だと思います。

日米でベンチャーキャピタルに出会えたのはどちらも周囲の人たちのおかげ(御林氏)

私は2007年の会計士試験に受かり、新卒で監査法人トーマツに入社して、主に株式公開支援業務を担当していました。2011年9月、24歳のときに早期退職の募集があったので手を挙げ、その年の11月にシリコンバレーに行ったのですが、そこでは、語学学校に通いながら現地のスタートアップとベンチャーキャピタルでのインターンとして、1年間アメリカでベンチャーキャピタル業務を行いました。その後、日本に戻り、現在のベンチャーキャピタル(グローバルブレイン)へ就職というキャリアです。 

アメリカのベンチャーキャピタルでのインターンは人づてで出会ったのですが、日本からシリコンバレーに行く間に2ヶ月あって、当時の上司であるトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬さんが「シリコンバレーに行った日本人を紹介するよ」という感じで、いろいろな人を紹介してくれて、そのつながりからインターン先に出会いました。

現職のグローバルブレインともトーマツの先輩の紹介で出会いまして、トーマツには感謝しきりです。

私がシリコンバレーにいることをトーマツの上司が知っていたのですが、その紹介でグローバルブレインの代表の百合本さんとサンフランシスコで朝食をご一緒させて頂いたのがきっかけです。

その後、半年くらい経った後に、百合本さんから直接連絡を貰い、Skypeで面接をして入社が決まりました。後日、百合本さんに「なぜ自分を採用してくれたのか?」と聞くと「会計士という比較的安定した職業なのに訳も分からずシリコンバレーに行って挑戦している、その辺りの感覚はベンチャー企業の社長さんと話す時にすごく大事だから」ということを言われ、会計士に受かったポテンシャルと挑戦したマインドを評価して頂いたようです。

気持ちの持ちようや挑戦心を打ち出して色々動いていると結果いろんなご縁があってベンチャーキャピタルに入るチャンスにつながったのかなと、自分を振り返るとそう思います

ベンチャーキャピタルへの転職は新規のファンドレイズをしたところが狙い目(木下氏)

ベンチャーキャピタルファンドを運営しているところはだいたい人手不足なのですよね。新卒採用を行っているのはJAFCO(ジャフコ)という野村證券系の大手VCのみで、後は中途採用中心なのでいい人しか採用しないんですが、基本的には人手は足りてないという業界です。

例えば、50億円(以上)のファンドを組成したというニュースを見つけたら「会計士の僕にニーズありますか?」とそのベンチャーキャピタルに聞いてもらうといいと思います。その時点で言えばニーズは絶対にあります。ただ、そこで通るかどうかはあなた次第です。

ベンチャーキャピタルは構造上そうなのですが、50億なり100億なりのファンドができると、投資先が増えるのですが、例えば、ひとりのキャピタリストが10社担当するファンドであれば、100社投資先があれば10人のキャピタリストが必要です。ファンドを組成すると投資先が増えますし、ファンドの代表者は資金を集めたり投資家対応をしたりといった仕事も出てくるので、投資先を担当する20代~30代のキャピタリストが必要になります。これはどこのベンチャーキャピタルでも同じです。 

会計監査の経験や公認会計士の知見はベンチャーキャピタルの仕事に活きるのか?

ベンチャーキャピタリストとしての仕事に、監査法人での経験や会計士としての知識はどれくらい役立つのだろうか?玉木氏、御林氏のふたりが普段の業務や投資先評価においてそれらがどう役立つかを語りました。 

経験が活きる部分はあるが、会計士の知見をどれだけ崩せるかが大切(玉木氏)

ベンチャーキャピタルの仕事全般について

会計士としての経験がベンチャーキャピタルの仕事に活きる部分はあると思いますが、それだけではできないです。監査をやっていた経験で一番役に立ったのは、会社は内部統制やガバナンスなど最終的に上場までいくのにどうあるべきか、どのあたりまで会社組織を作っていけばいいのか、というのがわかるのが大きいと思います。上場会社などの中身を知っている経験は役立ちます。

しかし、ベンチャー投資で相手にする会社さんは会社組織がきっちりしているわけではなく、チームが2、3人、ガバナンスってなんですか?というところから始まっているので、会計士がそういう人たちと話しや感覚を合わせるのは難しいです。

会計士の人たちはきっちりしたいですから、月次決算もちゃんとやって、ハンコを押すときは押印の履歴を残して承認して…という習慣があるので、そういったほうに考えてしまいがちなのですが、シードステージの会社に対して最初はそういった形式は飛ばしてもいいところですので、まずは会計士の知見をどれだけ崩して話ができるかどうかはひとつ重要なところかなと思います。

投資先の評価について

バリュエーションに関しても、当社の場合はインキュベーションやシードステージのスタートアップへの投資なので、完全に画一化していまして、どの投資先に対しても、評価額も投資額も当社のシェアも固定の数字で行っています。

会計士の皆さんだと、ベンチャーキャピタルが投資するときは、デューデリして将来のキャッシュフロー見積もって現在価値はいくらで…みたいなことを想像されるかもしれませんが、それはステージによって全然違っていて、インキュベーションやシードステージだと将来どうなるかまったくわからないのでそこは完全に決めてやっていますし、メールのレスが遅いなど、結構当たり前のことですが「こういったところができてないスタートアップは厳しいよね」といったナレッジもあって、そういったポイントを踏まえてそもそも投資すべきか、どれくらい評価すべきかを判断しています。 

数字に強い部分は最も役に立っている。企業ステージによって重視する項目は異なる(御林氏)

ベンチャーキャピタルの仕事全般について

監査法人での経験で、一番大きく役立っているのは数値へのアレルギーがないというところです。(監査法人での経験から)財務状況など全体観をすぐに把握ができますし、事業計画を見ていく中でも、その前提条件となる、損益構造、変動費とか固定費とかの見立てがあると、この計画はこうはいかないよね、とか、このモデルは基本的に粗利、限界利益が低いからこれぐらいのボリュームいかないと固定費回収できないよね、とかそういったところが肌感として抵抗なく理解できるのは会計士の経験があるからだと思っています。

逆に、試験だけ受かってベンチャーキャピタルの世界に入っただけではこうはできなかったと思うので、そういった経験をさせてくれた監査法人には感謝しています。

投資先の評価について

当社ですと投資対象は幅広くて、投資サイズは数千万円から最大5億円程度まで出資させて頂いています。創業したての会社に数百万円の出資はしないのですが、シード、アーリーからミドル、レイターまで幅広く出資をさせて頂いていますが、もちろんステージによってバリュエーションは全然違います。

個々の会社によって調達の希望金額が違いますので一概には言えませんが、私たちが投資検討するときは、シード、アーリー、ミドルいずれでも見る項目というのが、「経営チーム」「市場環境」「競合環境」「ビジネスモデル」「現状の実績数値」、大枠ではこのような項目を見ます。

その中で、シード、アーリーの会社だとより検討の重要性があるのが「経営チーム」「市場環境」「そのビジネスがどこに位置するのか」が重要になってきます。

ミドル、レイターの会社になると実際のビジネスモデルの仮説検証は終わっていて、こうやってドライブしていけばこうなるよね、というのはある程度見えているので、割と実績を見させていただきます。

基本的に見る項目はステージに関わらず一緒ですが、重きをおく部分がステージによって違うという感じです。

バリュエーションの観点ですと、私達もミドルやレイターで出資する会社でもDCFなどの手法は使いません。会社の事業計画を見て、経営者とディスカッションし、その中で、我々が計画の見立てをします。

「この会社だったら何年後に、類似企業のPERとかみていくとこのぐらいで上場するよね。逆算して今のバリュエーションだったらベンチャーキャピタルとしてはこのぐらいのリターンがでるよね」といったところを意識しながら投資検討のバリエーションはさせて頂いています。

一方で、ベンチャー投資では売上や利益のない会社を評価しなければなりませんが、売上や利益が出ている出ていないはそれほど重要なことではなく、業態によって違うと思います。

利益や売り上げが先に出るモデル、Eコマースとかですと売上や利益が先に出るモデルだと思うのですが、例えば、メディア系の会社はまずユーザー基盤を拡大していこう、その後にマネタイズがあるのでユーザーのKPIが好調であれば、この段階でこのマネタイズすれば売上は立つよね、と見立てがつくので出資させて頂きます。本当にそれぞれです。

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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