来る7月5日(土)に「独立・開業」「海外・グローバル!」をテーマにした第2回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。本記事ではイベントの雰囲気を皆様にお伝えすることを目的とし、第1回・公認会計士ナビonLive!!(テーマ:「FAS・コンサルティグ」「ベンチャー・スタートアップ」)の模様をピックアップしてお伝えいたします。
今回は「公認会計士×スタートアップ・ベンチャー」のトークセッション(前編)を取り上げます。
「スタートアップ・ベンチャー」のトークセッションでは、スタートアップやベンチャー企業で活躍する3名の若手公認会計士とSkyland Ventures(ベンチャーキャピタル)のファウンダーである木下慶彦氏が、スタートアップ業界とはどのようなところか、公認会計士がスタートアップで活躍するには何が必要かなどを熱く語りました。
モチベーションが不安を上回った。だからスタートアップを選んだ。
株式会社リアルワールド 経営本部 統括マネージャー/公認会計士 井上健
株式会社リアルワールド 経営本部 統括マネージャー/公認会計士 井上健
2006年に公認会計士試験に合格し、あずさ監査法人で活躍していた井上氏は、2011年にリアルワールドに転職した経験を持つ。あずさ監査法人では大手製造業のクライアントを担当。売上高が1兆円、2兆円という大企業で、IFRSやJ-SOX関連業務など「今思うと、ベンチャーやスタートアップとは無縁の業務でしたね」と振り返った。
「監査法人はすごく好きだった」と語る井上氏が転職した理由は、「ある時自分の将来を考えて、今の自分から想像できない35歳に成長していたいと思ったから。そのためには今の自分が全く知らない世界を経験することが必要だと考えた」という前向きなもの。そうして選んだのが、スタートアップという世界だったそうだ。井上氏はまた、「スタートアップへの転職にかぎらず、不安なく転職する人はいないと思う。自分の場合はモチベーションが不安を上回った」とも語った。何をトリガーやモチベーションにして一歩踏み出すかが、転職において重要なファクターだし、それは人によって異なるものだという。
参加者からの「よいスタートアップに出会うにはどうしたらいいか?」という質問に対して井上氏は、「スタートアップに興味があっても、どうやって転職したらいいかわからない会計士が大部分だと思う。わからなければ、ちょっとでも興味のあることにとりあえず動いてみるのがいい」とアドバイスした。井上氏自身も自分の進路を決めるにあたって100人以上の人たちと会い、さまざまな話を聞いていく中でスタートアップへの転職に決めたという。特に、起業のファイナンスの著者としても有名な磯崎哲也氏から言われた「スタートアップがどんなところかわからないなら行ってみたらいいよ」という言葉に、強く背中を押されたとのこと。
一方で、実際にスタートアップに入ると、会計士としてのキャリアが他の業務に役立たない現実に直面するのもまた事実であると井上氏は指摘した。井上氏も入社後、新卒採用の仕事を頼まれた際には、学生に会社のことをうまく説明できず戸惑い、また、さらにシンガポールでの子会社設立も任されるなど、仕事内容の大幅な変化に翻弄される日々が続いたという。
「誤解を恐れずに言えば、スタートアップに入ったから何かが良いというわけではない。何かが変わるわけでもない。良いサービスなら大企業だって作っていますから。」
スタートアップに行くべきかどうかは、個々人のモチベーションの源泉によるものだということを強調した。
会計士がスタートアップに転職する際の不安は3つ。
Excelをまわし続けるのか、それとも、世界を変えるのか。
株式会社ベストティーチャー 代表取締役CEO 宮地俊充
株式会社ベストティーチャー 代表取締役CEO 宮地俊充
2007年に公認会計士試験に合格し、あらた監査法人、独立系投資銀行、ベンチャー企業のCFOを経て、オンライン英会話サービスのベストティーチャーを創業した宮地俊充は、スタートアップへの転職を考える若手会計士からキャリア相談を受けることも多いという。
その際、会計士が不安に感じているポイントは3つに分類されるそうだ。
1つめは「金銭面の不安」。年収を下げてスタートアップに転職したにも関わらず、キャピタルゲインも得られなければ生涯年収が下がってしまう。家族や子供がいるケースでは、家庭に影響が出て深刻な問題になる。これに関して宮地氏は、「金銭面を優先するならスタートアップには行くべきではない。統計学的観点からも、期待値は監査法人のほうが高い」と語った。
2つめは「キャリアに関する不安」だ。失敗した時に次があるのか、これまでのキャリアがダメになってしまうのでは……という不安を抱く会計士が多いという。
宮地氏はこのキャリアの不安に関して、入った会社でどのような仕事をしたかで変わってくるためケースバイケースと断りつつも、「経理しかやりません」「財務しかやりません」というスタンスであれば、スタートアップには転職しないほうがいいと指摘した。ひとつの仕事にこだわるのであれば大企業に転職するほうが良いし、キャリアも安定するためだ。
会計士がスタートアップへの転職に抱く3つめの不安は、「スタートアップの目利きを正しくできているかどうかの不安」だ。起業家というのは往々にして素晴らしいビジョンを語るものの、入ってみたらそれほどではないこともある。いざ転職するというタイミングで「自分の選んだ会社は本当に成功する会社なんだろうか…」と不安を感じる会計士もいる。
これに関しては、宮地氏は、縁などもあるので難しいが、「社長の人柄」と「プロダクトやサービス」を重視するのがよいと主張する。特に、当事者意識を持って、その会社のプロダクトやサービスを使ってみることは重要であり、逆に、そのプロダクトを使わずに、スタートアップに面接に行ったり、入社を検討するのはナンセンスであるという。プロダクトがいいと思えるなら、そして、そのプロダクトが実現するビジョンに共感できるならその会社に入るとよいとのことだ。
宮地氏は自身が起業家であることから「スタートアップへの転職を希望する会計士には参考にならなかもしれないが」と断りつつも、スティーブ・ジョブズがジョン・スカリーをスカウトした際の言葉を引用し、自分は「このまま一生Excelをまわし続けるのか、それとも、世界を変えるのか」と考え、会計士のキャリアを捨てて起業に踏み切ったと語った。
>>後編「会計士がスタートアップに飛び込んでみたらどうにかなるのか?」に続く
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